話す力を身につけたい、伝え方を身につけたい、たくさんの人に話を聞いてもらえるような人間になりたい。そんな人たちは “聴く力” を意識してみましょう。
こんにちは、ボイストレーナーの入来院真嗣です。
話し方のレッスンにくる生徒さんは皆 ”伝え方” を気にします。
しかし、実は伝え方を鍛えなくても相手に言葉が伝わるようになる行動がいくつかあります。それが”聴く力”です。
今回はなんで聴く力を鍛えれば伝える力がアップするのかというお話や、聴く力を自分で弱めないためのポイントをお話しします。
相手の話を聞くと伝える力がアップする理由
まず一度、言葉を逆にしてみてください。
読んでいたただければ(2分くらい)納得できると思います。
この文章だと簡単に納得できる人も多いのではないでしょうか。
あなたの周りには相手の話をきかず一方的に言いたい放題言ってくる人、いませんか?
あなたの性格にもよるとは思いますが、そんな人にどれだけ正論をまくし立てられてもどこかで軽返事をして聞き流したり、反抗したくなったりすると思います。
ワッカリマシター(棒
そうそう。
返事こそ丁寧でしっかりしていたとしても、そんな人は今注意されたことをすぐ忘れてしまいます。もしかすると既に聞き流して覚えていないかもしれません。
では何故忘れてしまうのか。
それは相手に対する好感度が低かったり、不満を持っていたりすることが理由に挙げられます。
返報性の原理
それではそんな相手が先に自分の話をしっかり聞いてくれたらどうでしょう。
愚痴であったり、趣味の話であったり悩みであったり、自分が話したいことを話してある程度満足すると、そこに「返報性の原理」が生まれます。
簡単にいうと、他人から何かしら施しを受けたときにお返しをしなければと感情が動くことを示す心理学用語です。
自分が話したいことを話してスッキリすると、大なり小なり相手に親近感や好感が生まれます。そこで、相手が話始めると自分も聞いてあげようかなという気持ちになるのです。
・自分が悩み相談をした上での相手からの共感と深い良い話
・自分が悩み話半分で流された上でされる相手からの深い良い話
深い良い話の内容が同じだったとしても、話を聞いてもらえた人と流された人では相手の話に対する聴く力に差が出るのは結構想像できる話だと思います。
全然覚えなく大丈夫。
大切なのはそういう流れがあるから、自分の話を聴いてくれるからあなたの話も聴こうとする、すなわち『相手の聴く力がアップするから、あなたの伝える力がアップする』のです。
意外とできてない“聴く” 力
しっかりと “聴く” 力、これは『傾聴力』や、『アクティブリスニング』とも言われます。
大切なのは「聞く」ではないこと。
どう違うのかというとただ単に音が情報をして耳に入ってくる場合は”聞く”、自分から進んで耳に入れようとする場合は”聴く” と表現します。あなたは周りの人たちの話を ”聴け” ていますか?
自分で自信を持って “聴け” ている答えられる人は少ないと思います。
また、その少ない中でも、実は本当に “聴け” ている人と聴いている “つもり” なだけの人がいます。
そこで一つあなたに質問です
例えば相手が悩み相談をしてきたとき、相手が悩んでいるのにあなたは解決方法があっさり見えていて、どのタイミングでこの話をしてやろうかと待ち構えたことはありませんか?
これは ”聴いている” 状態ではないと僕は考えています。
そして実はこれ、ある程度話し慣れている人の方が陥りやすい罠でもあるのです。
話すことに慣れている人ほど、良くも悪くも『話しながら考える』という回路がしっかり作られています。
オチを決めてからそこにたどり着くように話し始めたり、話し始めてからオチをどこにしようか考えたりということをやってしまうのです。相手の話の途中でこれをやっていると、相手の話は文字通り『話半分』になってしまいます。
あなたは気持ちよく話し始めたり終えることができるでしょう。しかし、それが許されつつ相手にあなたの話が響くのは ”芯を食ったピンポイントで的確な相手が完全に理解できる言葉選びによる助言” であったり、”尊敬や好感度が高くて相手が初めからあなたの話を聞く気になっているとき” のみです。
それ以外の場合は多かれ少なかれ、あなたの話を聞く相手に姿勢に変化が現われていると思って良いでしょう。
”聴く” は”共感” や”理解”
ではどうやって “聴く” のか。
基本は相手を受け入れて、相手に対して理解を示すことです。
興味関心と言い換えても良いでしょう。
相手の話があなたの主張と対立する納得できないものでも、それは主張のレベルの話であって相手の存在そのものまで否定することはできません。あなたが相手の主張に同意するかどうかは別として、まずは相手がそういう主張を持っているということ自体を受け入れましょう。
大切なのは受け入れ方です。
相手の顔をみよう
相手の顔を見ることはとても大事なポイントです。
当たり前ですが、何か作業をしながらあなたを見ることなく相槌をうつ人と、手を止めてあなたを見ながら相槌をうってくれる人。どちらが自分の話を聴いてくれている気がするかと言われたら、見てくれる人の方ですよね。
相槌を意識しよう
もう一つ大切なのは『相槌』です。
自分には聴く力がある、と言っている人のほとんどが “ちゃんと相槌をうっている” と言います。しかしレッスンをしていく中で実際に僕が何かを話してそれに相槌をうってもらうと、多くの人の相槌がとても小さく、単調なものだということがわかりました。
相槌は相手の話が耳に届いているよという合図なだけではありません。
相手の話を受け止め、興味関心があるときにはより大きく、共感したときには素早く頷いたり強く頷いたりと、相槌は変化するものです。
ぜひ一度どこかのタイミングで、自分がどんな相槌の打ち方をしているか観察してみましょう。(人の話を”聴け” という話と矛盾しますが、自分の成長のためです)
聴く力があるかどうかは相手が決める
そして一番大切で一番忘れがちなポイント。
聴く力があるかどうかを決めるのはあなたではありません。
もちろん自分で言っても良いのですが、自分でどれだけ言おうが相手の評価が全てです。
最後に
僕もボイストレーナーという立場があるのでこうして記事で、あるいはレッスンで大切なことをお伝えしていますが、いつだって今回のお話が実践できているわけではありません。ついうっかり、答えることに気が向いてしまって “聴け” ていないことだってあります。
大切なのは気づいて、改めること。
いろいろな角度の積み重ねをしながら、日々成長していきましょう!