自分ではやってるつもりなのにダメ出しされる。
そんな人に読んで欲しいお話です。
こんにちは、ボイストレーナーの入来院真嗣(@contro_re)です。
普段はプロや歌の専門学生、その他夢に向かって頑張る人たちと一緒に毎日レッスンしています。講師業を始める前は自身も事務所を通して全国CMナレーションやテレビ出演などを経験してきました。
『今回のテーマ』
・注意されたことは”大げさに”やってみよう
・大げさにやることで期待してもらえる
・自分が指摘されることを大げさにやってみよう
今回は “大げさ” がテーマです。
結論だけ先に言ってしまえば、芝居でダメ出しをされた初心者ほど『やりすぎ』『おおげさ』を意識してやってみましょうというお話です。
もちろん『おおげさ』を意識するのにはちゃんと理由があります。
あなたは自分ではやっているつもりなのに『何も変わってない』なんて言われていませんか? そんな人はぜひ最後までお付き合いください。
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『おおげさ』ができると小さくしていける
突然ですが次のセリフを実際にお芝居のつもりで読んでみてください。設定、細かいシチュエーションは好きにイメージしてもらって構いません。
「会議中ですが失礼します。明日はよろしくお願いします!」
読みましたか?
日本語的に不自然なセリフですがわざとです。後ほど説明します。
当たり前の話ですが、実際あなたがどれくらいの声の大きさで読んだか、『会議中』や『!』という情報をどう解釈したかはわかりません。
しかし一つ確実なことがあります。それが『枠』の存在です。
人にはそれぞれ『枠』がある
『会議中』
『失礼とわかっていながら声を出す』
『!のマークがついている』
これをどのように解釈してどう演技するかはその人の中の常識、枠によって変わります。いくつか質問しますね。
・セリフを言っている人は今どこにいるでしょうか?
あなたが主人公だとして、会議をしている部屋に入ってきて『失礼します』と言いましたか? それとも会議している部屋から退出しようとして『失礼します』と言いましたか?
何も考えずスッと読んだ人、芝居に慣れていない人ほどもう片方の可能性に気づくことなくそれが当たり前の言わんばかりにお芝居をします。これがあなたの常識、『枠』です。
「会議中ですが失礼します」の声の大きさは?
会議に顔を出した人はどれくらい申し訳なさがあったでしょう。気を使った結果小さめ〜普通の声で入る人もいれば、謝罪はしているもの全く申し訳なく思っていない場合もあります。これによって声の大きさは変わりますね。
また、会議に参加していた人の場合、会議室全体の人にセリフを言ったでしょうか? それとも隣の席の人にこっそり話しかけたでしょうか。
以上は演劇の解釈やテクニックになってくるのでこれ以上は述べません。ここで言いたいのは『人によって簡単にでもこれくらい解釈の違いがある』、そしてそのパッと思い浮かんだ設定こそがあなたの『表現の枠』だということです。
笑い3年泣き3月
芸事の世界には『笑い3年泣き3月』という言葉があります。
簡単にいうと、泣きより笑いはもっと難しいという言葉です。
芝居も同じです。
枠が広いと自由に動けます。おおげさにできる様々なことから、ちょうど良いくらいを探すのは簡単です。
しかし自分の枠の中にないものを拾うのはとても大変です。もう少しハッキリと、もう少し気持ちを込めて、もう少し感情的に。ダメ出しとして理解はしていても枠の外側に向かってもう少しもう少しと枠を広げようとしてもなかなか難しいのです。
だから、初めからおおげさを目指します。
やりすぎと言われたら、その枠より内側に正解があるのであとはしっかり修正するだけです。
大げさにやることで期待してらえる
この『大げさを目指そう』というのはとある音響監督さんから言われたお話です。
実際には「芝居の方向性について何かリテイク(やり直し)を食らったときは “やりすぎ” くらいを目指して大げさにやって欲しい」と言われました。
待ってもらえる
リテイクとはシンプルに『やり直すこと』です。
例えばお芝居をしたのち「もう少し元気な感じでお願いします」と言われたとき、その指摘にあわせてお芝居を変更し収録し直すことがリテイクです。
このときあなたは「もう少し元気な感じ」のちょうど良い正解がわかりますか?
わからないですよね。
指摘する人と付き合いが長かったりすると、これくらいかなという目安がイメージできますが、他に会話をしない限りその正解は見えてきません。そんな時に必要なのが『大げさ』です。
一発で正解が出せなかった時、やりすぎることができると有利です。方向性さえ合っていればその内側に正解があるので欲しい芝居ができるはず、とある程度お付き合いしてもらえます。また、方向性が違ったとしても明確に伝わるため「ごめんごめんそっちじゃないんだ」という感じですぐに修正・すり合わせができるのが利点です。
しかし、もう少しと言われてた時に自分の『枠』、自分基準で “もう少し” を続けると
「んーもうちょっとできる?」
「もっと元気に」
「まだ少し足りないな」
なんて言われているうちに『どれだけ言ってもこの人はこれくらいしかできないんだ』と諦められてしまう場合があります。もちろんこうなったら次の仕事には繋がりません。
相手は欲しい音がもらえない、自分は次の仕事につながらない。こうなってはお互いに良いことがありません。
そう言った意味を含めて、しっかり仕事として意思疎通を図るためにも『大げさ』が必要なのです。
自分が指摘されることは『大げさ』に改善してみよう
というわけで今回は『大げさ』をテーマにお話ししました。
ダメ出しされたことに対しては一度徹底的に『大げさ』を目指してやってみましょう。音響監督さんのセリフですが『やりすぎと言われたらむしろ合格だと思え』とのことです。
やりすぎて怒られるのが嫌だなという気持ちは捨ててください。
やりすぎたら大成功です。
自分の枠の内側に正解があります。
判断の目安は『音』です。
自分なりに大げさにやっている “つもり” では全く意味がありません。どれだけ感情をあなたが込めようと、それが音に現れていなければ見ている側には伝わらないのです。
お笑い芸人・ハリウッドザコシショウさんは『誇張しすぎた物真似』で人気になりました。
あれはやりすぎですが、あれくらい、枠をぶち壊せると強いです。
元の音と誇張しすぎた音は全然違いますね? あなたも、ダメ出しされたセリフを練習するときは『自分の枠の中で読んだ自分らしい表現』と『馬鹿にしてるのかと言われるくらい大げさな表現』をハッキリ区別してやってみましょう。自分で判断できなければ録音するのがおすすめです。
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