リップノイズを減らしたい。
そもそもなんで音が鳴るの?
普段から心がけることはありますか?
そんな疑問にお答えします。
こんにちは、ボイストレーナーの入来院真嗣(@contro_re)です。
プロや専門学生と一緒にレッスンをする講師業の前は、声優のお仕事としてTVCMナレーションやゲームのキャラクターボイスなどを経験してきました。
『今回のテーマ』
・リップノイズの原因
・リップノイズの改善方法
・リップノイズが多いデメリット
今回は収録をする人や人前でマイクを使って話す人のために、リップノイズの『原因』と『対策』についてお話しします。
リップノイズは必ず低減させることができます。必ず改善するものだと信じてリラックスしてノイズと向き合いましょう。
養成所時代人生で初めてプロ仕様のスタジオと機材で声の収録をしたとき、ヘッドホンに返ってくる自分の声とリップノイズの多さに物凄く焦った記憶があります。音が鳴らないよう気をつけることばかり意識してしまい、収録のクオリティが酷いものだったのを覚えています。懐かしくも恥ずかしい思い出です。
それでは、是非最後までお付き合いください。
リップノイズってそもそも何?
リップノイズとは唇を開けたときや口内で舌が動いた時に起こる「ピチャッ」という音を指します。
マイクはその場所で生まれた音を録るだけの機械なので、リップノイズだけを取り除いて収録はしてくれません。
収録の場合は最終的に音圧を上げるため
ライブの場合はたくさんの人へ音を届けるのに音量を上げるため
小さなリップノイズでも結構はっきりと音になってしまうものです。
最近は一般の方でもコンデンサーマイクを使った動画配信や音声配信を行うので、リップノイズがとても身近な存在になってしまいました。
決して気持ちの良い音ではないですよね?
それでは、原因と原因別の対策方法について解説していきます。
リップノイズが起こる原因4つ
リップノイズが起きる原因は大きく4つです。
2 口の中が乾燥している
3 口の中の水分が多すぎる
4 発声が悪く口内が狭い
その通りです。
1つ1つお話しします。
①唇の乾燥
唇が乾燥し、口を閉じている状態から開いた状態、つまり唇同士が離れた瞬間にノイズは起こります。
張り付いた感触やノイズが乗ったことがハッキリとわかるので舌で唇を湿らせる等の動きをしがちですが、そうすると今度は湿らせるために口内に唾液が多い状態を作り舌を動かすためそれもリップノイズになりがちです。
どうしても対処しないといけない時は、喋りながらではなく確実に喋っていない部分でアクションを起こす必要があります。
②口の中が乾燥している
いわゆるドライマウスの状態です。
口の中の水分が少なくなってしまうと、口内の粘膜同士がくっつきやすくなり違和感を覚えます。
言葉を作るのに口内の粘膜同士の接触は避けられません。声帯で生まれた音が舌や喉などの空間の形が変わることで “言葉” になるからです。
口内が乾燥している人やしやすい人は喋るたびにノイズが乗ってしまうので絶対に避ける必要があります。
また、唇の乾燥を自覚した時と同様、意図的に剥がそうと動かすとノイズが生まれます。
③口の中の水分が多すぎる
逆に口内の水分が多すぎてもリップノイズは発声してしまいます。
水分と空気が混ざることで気泡から音が出ることもあれば、唾液の粘性が高く粘膜同士が離れるときに音がなってしまう場合もあります。
また、口内に汚れが多かったりするとそれも水分とともにベタつきの原因となり、ノイズが生まれやすくなってしまいます。
④発声が悪くて口内が狭い
プロの場合上記3つのいずれかが原因のことが多いのですが、特に訓練を積んでいない一般の方の場合、基本的には原因②や原因③と併せてこの『基礎発声力の不足』が挙げられます。
発声で喉周りに余計な緊張がある人は、筋肉の緊張で口の中が慢性的に狭くなっていることが多いです。
乾燥から張り付いた粘膜を剥がそうとするとき、狭く分厚く粘膜が接触しているとその分ノイズが発声する確率は上がります。
また人によりますが、奥歯同士が近く息継ぎのタイミングのたびに何度も歯を食いしばったりすると唾液が分泌されやすくなります。
他にも、猫背等が原因で呼吸が浅くなっていたり身体が”ストレス”を感じていると交感神経が優位になり、唾液は粘性が増します。ネバネバの唾液はノイズの可能性を増やします。
リップノイズは口周りだけなんとかすれば良いというわけではないということを覚えておきましょう
リップノイズを減らす対策法5つ
口内の水分量が多すぎても少なすぎてもいけない、姿勢も気をつけろなんて言われると神経質な方だとどうすればいいんだという気持ちになりそうですね。
ここからはそれぞれの改善方、対策法を5つ紹介します。
大切なのは気にしすぎないこと。
どれだけ対処法が完璧でも、意識しすぎてストレスを感じてしまうと台無しになってしまいます。
水分やリップクリームで唇を湿らせる
一つ目はシンプルですね。
唇が乾燥していて余計なノイズが入るのだから、乾燥対策をすることが大切です。
水分でも十分に応急処置にはなります。
軽く唾液で湿らせるだけでも応急処置にはなるでしょう。
しかし水も唾液も一瞬は潤いますが、すぐに蒸発してしまうため唇の乾燥がさらに進んでしまう可能性があります。
唾液に注意
唾液は特にやりすぎ厳禁です。
唾液には消化酵素や塩分も含まれるため炎症を起こす可能性もあります。
できれば保湿効果の高いリップクリームやワセリン等で唇をケアしましょう。
水分摂取で口内の乾燥を減らす
収録でもLiveでも、常に水は携帯しておきましょう。
糖分が入ったものや油分をもっていく烏龍茶などは避け、できれば純粋な水をお勧めします。
乾燥している場合は水分を摂ることで粘膜同士のひっつきを防ぐことができます。
また、ストレス等で粘度の高い唾液が多く分泌されているときも一度リセットするので一時的に効果があります。
魔法のアイテム・リンゴジュース
プロの声優さんの中では、リップノイズにはストレートの100%リンゴジュースが効く
という話が語り継がれています。
薄めているパーセントの低いやつだと糖分がかえって良くないというのはわかるのですが、語られているのは『濃縮還元ではなく、ストレートのリンゴジュース!』という噂。
……そしてプラシーボかもですが、本当に減るんですよね。
・歯磨き
口内を清潔に保つのは物理的にもノイズが乗りにくくなることにつながります。
口の中が粘つく唾液はリラックスしている時は分泌されにくいので様々な理由からとてもおすすめです。
ストレスを避ける
ということでストレスを避けるのもとても大切です。
唾液はざっくりと3種類、サラサラとネバネバとその混ぜ合わせがあるのですが、このネバネバが分泌されている時は交感神経が刺激されている時、すなわち緊張していたりストレスを感じている時です。
ネバついた唾液がサラサラと比べてリップノイズになりそうなのはイメージできるでしょうか。
もちろん唾液自体に罪はありません。
特にネバネバ唾液は細菌の侵入を防いだり口内の保湿のために良かれと思って身体が出しているとも言えます。
しかし収録やLiveには邪魔ですね。
マッサージしてる人もいる
唾液を止めようと思っても止められるわけではないので、どうせならリラックスとネバネバを防ぐイメージでしょうか。
医学的な知識がないので判別はできませんが、プラシーボでも馬鹿にはできないのでやってみたい人はぜひ取り入れてみてください。
基礎発声力を上げる
余計な緊張を防ぎ、身体をリラックスさせつつ口の中を広く保つために基礎発声の改善を目指すのもリップロールをなくす訓練になります。
僕自身養成所での初めての収録の時は発声も酷く、しかも緊張でガチガチ、コンデンサーマイクが拾ったリップノイズがモニターしているヘッドホンからピチャピチャ聞こえさらに焦ってストレスと緊張から身体がガチガチになり、という散々な経験があります。
ここまで読んでくれた方ならわかると思いますが、リップノイズを増やすようなことしかしてません(笑
基礎発声の向上は大切です。
口の中が広くリラックスし、舌が自由に動けるようになると張りつきを減らすことができます。また、リラックス自体が余計なストレスを減らしてくれるので、口内の乾燥やそれを防ごうとネバネバの唾液が分泌される機会も少なくなります。
ぜひ普段から発声を意識してみてください。
ポイントは猫背になって息が吸いづらくならないことと舌や喉が力んでいないこと。
詳しく知りたい方はぜひ関連記事をチェックしてみてください。
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リップノイズが多いデメリット
以上、リップノイズが起こる大きな原因4つと解決法5つをお話ししました。
感度の良いマイクで録れば録るほど、リップノイズを完全になくすことはできませんが限りなく減らすことは可能です。
最後にリップノイズが多いことで起こるデメリットを2つほど紹介しておしまいにしたいと思います。
除去作業が増える
自分自身で収録している人でも、ボイスドラマやナレーションを作ろうとするとリップノイズは絶対にカットします。
収録時間が増えるほど
セリフ量が増えるほど
自分で自分の首を締めることになります。
<嫌われる>
自分自身の首を絞めているうちはまだ良い方です。よくないですが。
大きなデメリットになるのは、編集作業をする人が別にいる場合です。
プロでもアマチュアでも、編集が少ないと作業が楽な人と多い人、どちらが好かれるかはハッキリしてますね。
どんな世界も横のつながりは大切です。
同じぐらいの実力の人が二人いた場合、当然作業が楽な人を推薦します。
また、一定の仕事をしている人のリップノイズならまだ良いですが、リップノイズを消して消して、ようやく全部消し終わった時出来上がった商品のクオリティが低いとどうでしょう。不満は倍増します。
様々な理由から、リップノイズは減らしたほうがいいですね。
聴き手が不快に思ってしまう
収録形式じゃない場合。
マイクを使った配信や人前でのスピーチ、司会など。
リップノイズは純粋に『不快な音、余計な音』です。しかも内容とは何も関係ありません。
食事中に口を開けてクチャクチャと音を立てて物を食べる人がいたらどう感じるでしょうか? 気にならない人もいますが、多くの人はそれを不快に感じます。マイクを持って話している人の小指がずっと立っていたら気になってしょうがないですね。
余計な情報、刺激はないに越したことはありません。
やはりリップノイズは減らしたほうがいいです。
まとめ
今回はリップノイズについてお話ししました。
ストレスも原因の一つになってしまうので、必死に頑張らないでください。
リラックスして、一つ一つ対策をとって、自分は大丈夫だと信じましょう。
焦らないことが大切です。
あなたの収録やLiveがいいものになりますように!
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