性格が顔に出るって本当なの? なんで顔に出るの? それとも嘘なの? そんな人たちのためにお話しします。
こんにちは、ボイストレーナーの入来院真嗣です。
歌や話し方のレッスンをしていてたまに聞く悩みがあります。それは「自分の顔つきのせいで歌(スピーチ)がブレないか」というもの。
結論だけ言うと特別な状況以外ではほとんど気にする必要はないのですが、そもそも何故、性格が顔に出ると言われているのでしょうか?
・印象を良くしようと一部を意識しすぎると不自然になることもある
・職業柄の強面や、無邪気に性格の悪い人だっている
顔には無数の表情筋がある
一番大きな原因は表情筋です。
顔には20種類以上の筋肉があります。
その筋肉のバランスによって表情が変わるので、まとめて “表情筋” と呼ばれています。
笑顔を作るにはこれとこれとこれが、怒った顔を作るにはこれとこれとこれが、といった風に様々なバランスで使われていて、ある表情では使ったりまたある表情では使わなかったりするという所がポイントです。
使っている筋肉は衰えにくい
皆さんは体を動かす事が好きですか?
ジョギング、筋トレ、水泳、球技や武道といろいろありますね。
どんな運動をするかによって使われる筋肉は異なり、そして、使っている筋肉ほど大きくなったり、衰えにくかったりします。サッカーをする人の足の筋肉が発達していたり、パワーリフティングをする人の腕の筋肉が大きかったりするのを見るとわかりやすいですね。
表情筋も同じです。
沢山笑う人は笑う筋肉が発達します。
沢山怒る人は怒る筋肉が発達します。
無数にある表情筋の中から選択して表情を作るため、習慣によって筋肉のバランスが変わってくるのです。
使わない筋肉は衰えていく
では逆に、運動しないとどうなるか。
使わない筋肉は衰えていきます。
学生時代は運動していたのに社会人になって運動をしなくなった人。
マイカー通勤とデスクワークのコンボで足腰も弱くなってきた人。
生徒の皆さんはそれぞれ「昔は何々できていたのに」などと言いながら筋肉量の変化をお話ししてくれます。
また、使わないだけではありません。加齢でも筋肉は衰えていきます。衰えた筋肉は細く、少しずつ弱々しくなっていきます。若者と高齢者を見比べると想像できますね。
二つが合わさると “性格” が出る
あとは簡単です。
よく使う筋肉は残り、使っていない筋肉が衰えていきます。
よく怒る人はその表情筋が使われているのでしっかり残り、その分使わない筋肉の方が先に弱っていく。だから怒ったような顔になる
よく笑う人はその表情筋が使われているのでしっかり残り、その分使わない筋肉の方が先に弱っていく。だから明るい印象の顔になる
筋肉だけではありません。
加齢とともに皮膚もハリや弾力がなくってきます。
すると、筋肉の動きグセの多い方向でシワが残りやすくなるのです。笑い皺、怒り皺といった言葉はここからきています。
以上の理由が重なることで『性格が顔に出る』『人生が顔に出る』と言われるようになったのです。
意識しすぎると、かえって印象は悪くなる?
なので性格が災いして顔に出てしまっている人は、印象を変えたいなら普段から表情筋を意識して使っていくことが大切です。
怒りっぽい顔になりたくない人は、怒りっぽい顔を減らすかその他の表情筋を多めに使う努力が必要でしょう。
しかし、元々の骨格や筋肉バランスが怒った表情に寄っている人、その他困り顔や笑ったような顔など意図せず他の感情を持っていると誤解されてしまう人がその他表情筋を意識しすぎるのは注意が必要です。
作り笑顔が胡散臭さを助長する
微表情という研究分野があります。その中で笑顔についてはこのように述べられているそうです。
本音は0.2秒で見抜ける!微表情からホントのキモチを知る技術
2.継続時間…本当の笑顔は0.5秒から4秒、愛想笑いはそれ以上続くことがある。
3.使われる筋肉…本当の笑顔は目の周りの筋肉、眼輪筋が使われる(目が笑う)。愛想笑いでは使われない。
4.笑顔の消え方…本当の笑顔はゆっくり消える、愛想笑いは突然表われ、突然消える。
5.笑い方…愛想笑いでも眼輪筋を使える人がいる。しかしその場合も本当の笑顔に比べて「笑いすぎている」傾向にある。
6.シンクロ度…本当の笑顔は目と口の動きがシンクロする、愛想笑いではズレる。
少しでも印象をよくしようとする努力は大切です。笑顔はとても大切なコミュニケーションツールだと言えるでしょう。しかし、度が過ぎるとその笑顔は作り笑顔と判断され、あなたの印象を悪くしてしまうのです。
怒っているように見られるからなるべく笑顔を維持しているという方がいましたが、元々の顔に貼り付けたように笑顔をキープしていたため、かえって周りから “怖い。何を考えているか分からない” と思われてしまっていたという例もあります。
何か表情を意図的に足すときは、同じ表情を長時間ずっと維持しすぎないよう気を付けましょう。
職業柄の強面や無邪気に性格の悪い人だっている
その上で、最後は『表情が必ずしも性格を映し出すわけではない』というお話をします。
例えば、僕の知り合いの俳優さんで強面で強い役ばかりキャスティングされる方がいます。
役者は表情筋も含め “表現” のプロです。
求められる感情を解釈し、それに沿った表情や動作、つまりお芝居をします。
その方は睨んだり威嚇したり怒鳴ったり、何度も何度も特定の筋肉を使う結果、元々の強面に磨きがかかり、かなり迫力のある顔つきになったと言っていました。
そして、これはプロに限った話ではありません。立場上どうしても誰かを強く叱責したり、怖い顔を維持しなければいけない人だっているでしょう。使われる筋肉や使われない筋肉で顔つきが変化するのだから、必要に応じて表情を変化させる必要がある人は、顔つきと性格の関係性は低くなります。
また、逆のパターンもあります。
例えば『無邪気に性格の悪い人』などはどうでしょう。
相手が不満で何か攻撃する人とは違い、相手が嫌がることをしたい、相手が困っている姿を見るのが楽しい、などといった人はどちらかというと表情筋的には笑顔や楽しさを表す筋肉が多く使われます。
すると、性格は陰湿でたちの悪い人でも、表情は優しそうだったり親しみやすそうだったりする場合があります。
最後に
以上、顔に性格や人生が出る理由と出ない理由です。
身もふたもない言い方をするとどっちもあり得るということです。大切なのは顔で判断することではなく、その人が何をするか、何を語るか。
表情筋の鍛え方については後日ボイストレーニングとしてご紹介したいと思います。