並行してピアノやギターをやった方がいいんだろうか。
そんな人に読んで欲しいお話しです。
こんにちは、ボイストレーナーの入来院真嗣(@contro_re)です。
普段はプロや歌の専門学生達、そして夢に向かって頑張る様々な人と一緒に毎日レッスンしています。
講師業の前は事務所を通して声優俳優・音楽活動を行っていました。
『今回のテーマ』
・楽器が出来ることによるメリット
・楽器が出来ることと発声は別
・楽器が出来なくてもやっておきたい練習
今回は歌と楽器の関係性についてです。
楽器が出来た方が歌が上手くなるという話はよく耳にしますが、いざ踏み出すとなると歌の練習時間だけでなく楽器の練習時間も必要になります。プロを目指している人だと時間が有限なため焦りも生まれます。歌にだけ集中した方がいいのか悩む学生も多いです。
考えられる事実と個人の経験をもとに、以下楽器と歌の関係性についてお話ししていきます。ぜひ最後までお付き合いください。
楽器は出来ないより出来た方が歌に役立つ
初めに結論です。
結論は『出来ないよりは出来た方がいい』というものになります。
まぁまぁ。
確かに出来た方が良いことだらけなのですが、じゃあすぐにでも始めるべきなのかというとそうではありません。
楽器が出来ることで得られるメリットと、そうでないことがあります。
ここではまず楽器が出来ることで得られる具体的なメリットについてお話しします。
音感が鍛えられる
まずシンプルに一番のメリット、『音感』です。
現代の楽器は基本的に平均律が使用されています。
<十二平均律>
1オクターブを12等分した音律のこと
和音であれ単音であれ、現代の音楽に必要な12個の基本の音を何度も繰り返し鳴らすことになるので音感が鍛えられていきます。その結果『なんとなく歌う』ことがなくなります。
もちろん楽器の経験がなくても相対音感がしっかり鍛えられていれば問題ないのですが、楽器の経験値がある人は楽器の演奏と同時にある程度の相対音感が鍛えられるため、結果としてこの修正がしやすくなります。
リズム感が養われる
楽器で演奏をしようとすると歌より敏感になるものがあります。それが『リズム感』です。
テンポを合わせて一定のリズムで弾くことや、表拍裏拍の感覚が “何となく” 歌うことより必須なので結果としてリズム感が養われるのです。
演奏していると “鳴らしている音がリズム通りかどうか” など客観的になれる人が多いのですが、歌の場合自分が楽器でもあり演奏者でもあるのでどうしてもその辺が曖昧になってしまう場合があります。
みんなで合わせる感覚が鍛えられる
楽器を練習していると、音源と合わせたり、誰かと一緒に合わせたりする場面が出てきます。
こうした練習は『周りの音をよく聴く』という習慣に役立ちます。
周り音を聴く例
例えばバンドでセッションする場合、ドラムに合わせてピアノを弾いたり、ボーカルに合わせてギターを弾いたりします。こういう経験を繰り返すことで、個人の相対音感、リズム感、そしてそれらを合わせて一つの音楽を作っている感覚が養われていきます。
もちろん一人でピアノを弾いていても効果は同じです。
音源と一緒に合わせるのも練習になりますし、弾き語りとして自分の歌と演奏を合わせる練習も効果があります。
ただなんとなく歌うより、歌と伴奏がリズムやコードに “ハマっている感覚” が鍛えられるので楽器は積極的に音感やリズム感、俯瞰を訓練するのにもってこいだと言えます。
楽器が出来ることと基礎発声は別
以上、まずは楽器を経験することで得られるメリットについてお話ししました。
しかし現実問題、楽器をやれば必ず歌が上手くなるかといったらそうではありません。実際僕は10年間、嫌々とはいえピアノを経験していましたが、1オクターブも声が出ませんでした。
これはピアノが弾けたところで歌の演奏技術、つまり『基礎発声』とは全く関係がないからです。
ボーカリストは自分が楽器
歌を歌う人は自分自身の身体が楽器です。
呼吸をコントロールして声帯を震わせ、その音を口や舌といった共鳴腔の形で言葉にします。これはどれだけピアノやギターを練習したところで上達しません。別の楽器だからです。
ピアノを練習してギターが上手くならないのと同じです。
楽器の使い方、それによってどんな音が出るかは楽器によって違います。これが楽器を練習しても歌が上手くならない人の理由です。
楽器が見えない
しかも残念なことに、ボーカリストの楽器は目に見えない部分がたくさんあります。
呼吸をコントロールする筋肉も、音が鳴っている声帯も、鏡を見なければ共鳴している空間の一部すら見ることはできません。無意識のうちに余計な力が入っていたり効率の悪い使い方をしていても気づくことが難しいのです。
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それらをしっかり訓練するには当然、他の楽器を練習している場合ではありません。
音感も、リズム感も、俯瞰することも全て歌には必要不可欠です。楽器を練習することで鍛えることができます。しかし、歌が上手くなるために一番大切な『基礎発声』は他の楽器を練習しても手に入れることはできないのです。
歌と並行して楽器の練習をすることは良いことですが、この部分を見失わないようにしましょう。
楽器が出来なくても歌のためにやっておきたいこと
それでは最後に、楽器が出来なくても歌のためにやっておきたいトレーニングについてご紹介します。
・音感トレーニング
・リズムトレーニング
どちらも楽器を練習することである程度鍛えられるものですが、弾き語りをする予定がなかったり歌に集中したいという人のための練習方法です。
アプリを使おう(音感訓練)
無料アプリで構いません。ピアノで1オクターブ以上あるものをダウンロードしましょう。
あとは簡単です。
指一本でいいので、自分が歌いたい歌を『鳴らせる』ようにしましょう。
スムーズに弾ける必要はありません。自分が歌うべき曲、演奏すべき音をなんとなくではなくしっかり客観的に把握するという練習です。
音源を聴こう(リズム訓練)
理想は歌の入っていないインストバージョンです。
歌が入っていない状態で聞こえる楽器を書き出してください。自分の演奏(ボーカル)と一緒にどういう仲間が演奏しているのかを把握する練習です。
楽器を把握したら、それぞれがどんな演奏をしているか口ずさんでみましょう。
ある程度把握したらそれらを聞き逃さないように冷静さを持ちつつ歌いましょう。歌のグルーブ感や一体感に影響が出ます。
焦って楽器を始める必要はない
以上楽器を始めることで得られるメリットと、初めても歌が上手くならない根本的なお話、そしてそれでも何かしらの音感やリズムトレーニングがしたい人向けの練習方法のご紹介でした。
夢を追いかけている人は焦ります。
貴重な10代があっという間に終わる感覚、20代がどんどん過ぎていっていく感覚。
焦った結果なんでも “良い” と聞いた情報に飛びつきたくなりますが、一度冷静に考え直しましょう。
その結果楽器をすぐにでも練習し始める方がいい人もいますし、それよりもやらなければいけないことがある場合の人もいます。
一つ一つ後悔のない選択をしてください。
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