表現力を上げたい。
棒読みになる理由が知りたい。
そんな人に読んで欲しいお話しです。
こんにちは、ボイストレーナーの入来院真嗣(@contro_re)です。
普段はプロや専門学校生、その他夢に向かって頑張る人たちと一緒に毎日レッスンしています。
講師業を始める前は事務所を通して声優や俳優、音楽活動を行っていました。
『今回のテーマ』
・棒読みになる理由
・棒読み改善のための品詞分解トレーニング
・セリフに違和感があったら一度言い換えてみよう
今回は演技力のお話です。
どれだけ気持ちを込めてもどうしても棒読みになる、表現力がない、ヘタクソだと言われるという人は結構います。それにはちゃんと原因があります。
棒読みになってしまっている人の原因と改善トレーニングをご紹介するので、演技力や表現力を磨きたい、知識として引き出しを増やしたい人はぜひ最後までお付き合いください。
何故セリフが棒読みに聞こえるのか
まず初めに何故棒読みに聴こえてしまうのかということです。
今回お話しする根本的な原因ではなく、表現の改善方法としての訓練、言葉の立て方や音の変化について興味がある人はこちらの記事をチェックしてみてください。
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日本語にも文法がある
棒読みに聞こえる原因として一番大きいのが、『セリフから日本語のルールがなくなっていること』が挙げられます。
例えば中学校の時、英語で「I play tennis(私はテニスをします)」といったような文章を習いました。
・I
・play
・tennnis
お勉強がしたいわけじゃないので覚えなくていいですが、この英単語とセットで主語や動詞といった文法を習ってきたのを覚えていないでしょうか?
これは英語だけの話ではありません。当たり前に使っていて気がつかないだけで、当然日本語にも文法は存在します。
この自然に使っている日本語のルール、”文法” という言葉の組み立ての意識がなくなると台詞は不自然に聞こえるのです。
棒読み改善には日本語の文法意識が特効薬
普段から文法なんて意識したことないよ?
うん。
とはいえ、急にこんなこと言われても普段から日本語を喋るのに文法を意識したことなんてないという人の方が多いでしょう。これにもちゃんと理由があります。
習慣化されたものほど無意識になる
人はたくさんの情報を脳で受け取り、処理をしています。実は全てを受け止めようとしたら負担がかかりすぎて脳がもたないとされています。そのため余計な情報を事前にカットしたり、習慣化されたものほど考えなくても処理できるように作られているのです。
そもそも私たちはどうやって日本語を覚えたでしょう?
ネイティブの日本人の場合、文法のルールを言葉で把握しながら勉強してきたわけではありません。周りにたくさんの日本人がいて、話している姿を真似し、時に教わりながら日本語というものを扱えるようになりました。この時自然に日本語のルールを叩き込まれています。
繰り返しルールを観察し、それをもとにコミュニケーションをとり、問題なく意思疎通ができるようになってくると言葉に対する文法的な意識はどんどんなくなっていきます。これが自然に日本語を話せる仕組みです。
“セリフ” になるとルールが消えがち
他にも文法を教わる具体例です。
「先生トイレー!」
こう言って「先生はトイレじゃありません」と怒られるなんていう有名なネタがあります。これも文法や日本語を意識させるいい例だと思います。
また、何かが欲しい子供が「これ…」だけ言ってきた時に「これがどうしたの?」と敢えて尋ねる大人がいます。この時の『私』『が』トイレ『に』『行きたい』『です』 やこれ『が』『欲しい』『です』と言った部分が、日本語を覚え、誰かとコミュニケーションをとる上での大切なルールとなります。
棒読みになる人は日本語のルールがなくなるというお話をしましたが、具体的には、この主語や述語、”てにをは” といった言葉のルールがなくなってしまいただの音の塊になってしまう傾向が見られます。
同じ音の高さで読んでみよう
試しに『私はこれが欲しいです』というセリフを、同じ音の高さで一つの呪文のように『ワタシハコレガホシイデス』読んでみてください。
棒読み改善のため日本語を品詞分解してみよう
棒読み、大根芝居。
真面目にやっているはずなのにこう言われてしまうと本当にショックですよね。
これを改善するための方法をとして、一度セリフをしっかり品詞分解してみることをオススメします。
ざっくりいうと先ほどの『これ』『が』『欲しい』『です』のように、日本語をルールに従って最小に分解することを指します。
ただし目的はあくまで棒読み改善なので文法的な正確さはなんとなくで構いません。また、自分でよくわからないという人は自動で品詞分解してくれるサイトなどもあるので下記のリンクを参照してみてください。
外部リンク
日本語のテキストを入力すると、品詞分解して、結果を見やすく表示するツールです。…
例文『私はとても元気です』
分解したのちこれが助詞で助動詞でなんてことは覚える必要がありません。単純に、『日本語はこういう風に分解することができるんだ』と意識することが大切です。
というわけで例文『私はとても元気です』を分解すると、
私
は
とても
元気
です
となります。
まずはゆっくりでいいので、こういう風に分解できるんだという意識で一つずつ区切って読んでみてください。
少しずつ繋げよう
何度か口に出して読むことで言い慣れてきたら、今度はその “分解した意識” をなくすことなく一つなぎで読みます。
『私、は、とても、元気、です』と一つずつ区切って練習した日本語の意識を持ちながら、ゆっくりと区切らず『私はとても元気です』と読んでみてください。発声しているセリフはゆっくりだけど普通に、だけど頭の中ではしっかり品詞分解をしながら。これが日本語のルールに沿って喋っている状態です。
日本語のルールで喋る=自分の言葉で話している状態
最終的には文法のことを忘れて自然な速さで話せるようになることを目指します。意識しながら言葉が辿々しくなってしまうとそれはとても不自然です。
普段喋っている時も実際はこのプロセスが無意識レベルにまで落とし込まれ、省略されて行われているにすぎません。日本語のルールを意識しながら話すのは『自分の言葉で話す』、つまり棒読みや大根芝居になりにくい要因としてとても大切です。
もちろんこれは表現をする上での大前提になります。自分の言葉で話した上で、感情や感情に沿った表現が必要です。「私はとても元気です」という短い文章でも、どの言葉を強調するかで聴こえ方やそこから読み取れる感情は変わってきます。これが個性・表現になります。
逆にいえば、どれだけ感情やそれに即した言葉の強調があったとしても、日本語として不自然な話し方をしていればそれはどこか音芝居と言われたり、不自然、嘘くさいと言われてしまうのです。
「私はとても元気です」
「私はとても元気です」
「私はとても元気です」
「私はとても元気です」
「私はとても元気です」
実際に文字の色が違う部分を強調してみましょう。頭の中では品詞分解をして、日本語のルールはしっかり意識しながら挑戦しましょう。
棒読み改善テクニックは歌やスピーチでも使える
今回は棒読みになってしまう人の原因と改善方法としてセリフを品詞分解することを紹介しました。
これは言葉を扱っているもののならなんでも練習になります。
自分の歌がどこか突き刺さらない、スピーチが台本の用意しすぎで借りてきた他人の言葉のようになってしまった。そんな人もぜひこの品詞分解の練習をしてみて欲しいです。
こんなことで本当に意味があるの思うかもしれませんが、録音して実際に聞いてみるとその違いに驚くと思います。それくらい効果のある練習法なのです。
自分一人で練習していてわかりづらい方はぜひレッスンにお越しください。また、お金をかけるのがもったいないという人は街のスクール(シアーミュージック や【アバロンミュージックスクール】 など)が無料体験レッスンを行っているので足を運んでみるのもいいかもしれません。
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