歌のレッスンに入る前のストレッチや発声練習。早く終わらないかなぁ〜となんとなく流していませんか?
単なる準備運動ではない
結構な人が誤解している事実が一つあります。
それは発声練習を単なる “声を出す前の準備運動” と捉えている人が多いことです。
「いきなり声を出そうと思ってもでるもんじゃない」
「運動と一緒でいきなり激しいことをすると痛めてしまう」
「だから歌う前に声出しの習慣として発声練習をする」
こう考えている人がとても多いのです。
もちろんそれは間違いではありません。発声練習によって、声を出す筋肉の柔軟性を高める行為はある種の動的ストレッチともいえるでしょう。これによって発声に関わる諸筋肉はよりしっかりと働くようになります。
しかしこれは発声練習を行う目的のほんの一部でしかありません。自分の歌唱力に関して弱点や苦手意識を把握していればいるほど、あなたは発声練習の時間をより一層大切にしなければならないのです。
練習の目的を意識する
ドレミレド、
ドミソミド、
ドミソドソミド、
……文章で表すのは難しいですね。
発声練習では様々な音階で声を出します。
上記のような音の並びに対して、Ah の口でやったり、gug, mum, nay, nah,など目的によって無数の言葉も使い分けます。一つ一つ意味があるのです。
あなたは今自分がやっている発声練習が何のためか把握していますか?
先生は目的を教えてくれていますか?
どんな問題を解決するためにやっているか理解していますか?
顎や舌の奥に力を入れない練習なのか、軟口蓋を引き上げる練習なのか、余計な息漏れを防ぐ練習なのか、先生が説明している話を軽く聞き流してはいませんか?
早く歌いたい一心で、ただ言われたことを真似しているだけだと効果は半減です。
効果半分で大したことが身に付かないのだから、そのまま歌にうつってもあまり意味はありません。筋トレでもそうですが、どこを鍛えることを目的としているかしっかりと把握し、正しいフォームで練習することでより効果的なトレーニングになるのです。
練習を歌に活かす
なんとなく発声練習を行い、やっと終わったー!と自由に歌ってはいけません。
喉を開ける練習をしたならより開いて、息漏れを減らす練習をしたならそれを活かして歌いましょう。発声練習はそのためにあります。
歌詞という複雑な子音と母音の組み合わせに振り回されることなく、
メロディという、ランダムに上がったり下がったりするものに集中力をそがれることなく、
規則的な音階とシンプルな語の組み合わせでそれぞれが抱える発声の悩みの解決を目指す。それが発声練習です。
もちろん最終的に自由にのびのびと歌うことは大切ですが、問題が解決しないうちから自由に気持ちを込めて歌っているとそれまでにしみついてきた癖や習慣は簡単には抜けません。
発声練習をなんとなくでやっている人はこれを機に、気持ちを改善してみてはいかがでしょうか?