誰もが頑張る発声練習。
でもなんだか思ったように上達しない。
それにはちゃんと理由があるんです。
こんにちは、ボイストレーナーの入来院真嗣です。
練習をしているのに伸び悩むことってありますよね。今回は具体的な解決策に入る前の段階、練習に取り組む上で知っておきたいいくつかのポイントをご紹介します。
がむしゃらに練習して伸び悩むくらいならまずは一歩離れてゆっくり考えてみてください。
この記事が、あなたが壁を破るお役に立てたら幸いです。
見落としがちな “当たり前” のこと
この記事を読んでいるあなたは多かれ少なかれボイトレに興味がある人でしょう。
そして、程度の差こそあれ全員に共通していることが一つあります。それが、
ということです。
………。
そんなことはわかっている。
だからこうやって記事を読んでいるんじゃないかという声が聞こえてくるようです。
だけどこれ、とても大事なことなんです。
当たり前だけど忘れがち
今より上手に声を使えるようになりたい。
これは言い換えれば、あなたが現状自分の発声に満足していない、今のままでは不十分だと理解しているということができます。
なのにどうでしょう。
たくさん練習しても思ったように成果が上がらないほとんどの人が、わかっていると言いながら、その不十分な発声の仕方を維持したまま、新しいことをやろうとしているのです。
同じことをやっていて結果がでないのなら、当然やり方を変えなければいけません。
分かっているようで、意外に難しい
上記の説明をしても出来ない人がいます。
「そんなことはわかりきっている。それでもできないんだから他の説明をしてくれ」
という意見もよく耳にしますね。
しかしそういう方、
例えば力みすぎて高い音が出ない人に「失敗してもいいです。力んでしまう、ただそれだけをやめてみましょう」とお伝えしても、半分くらいの方は力みをやめることが出来ません。
そしてこう言います。
「だってこれやめたらまともに声が出ないんです」
こういう方は結局何も手放せていません。
・高い音を出したい
・早く上手に歌いたい
・下手なのはいやだ
・失敗したくない
そういう気持ちが焦りを生んで、 “ただ力を入れすぎていることを手放すだけ” ができないのです。
上手に失敗してからが本当の始まり
繰り返しになりますが、同じことをやっていて結果がでないのなら、当然やり方を変えなければいけません。
現在伸び悩んでいて、
ある程度原因に心当たりがあるあなた。
本当の意味でその悪い習慣をやめる挑戦は出来ていますか?
失敗を恐れて同じミスを繰り返していませんか?
何かを得るための失敗は決して無駄ではありません。
何かをする意識はとても大切ですが、同じくらい、何かをやめる意識も忘れないでください。
発声ってそもそも何だろう?
もう一つ質問を追加します。
そもそも発声とはなんでしょう?
その仕組みはボイトレ本や先生たちが説明している通りです。
探せばいくらでもでてくるのでここでは割愛します。
今問いかけている発声とはそういった仕組み的な話ではありません。
ここで考るべき “発声” とは、”表現のために用いる手段・道具” であるということです。
例えるなら鉛筆握りのように
発声は声を使って表現を行うための根幹です。
文字や絵を描くための鉛筆握り、そして姿勢や手の動かし方を想像してみるとわかりやすいでしょう。
あなたが声を出すための身体の使い方(声の出し方)が筆の握り方や手の動かし方、出した声が絵や文字にあたります。
文字を書くという行為は人類共通ですが、筆の持ち方、力の入れ方、動かし方は人の数だけ違います。
声をだすという行為も同じことがいえるのです。
まずは効率的な握り方や手の動かし方(声の出し方)。
それを使ってどんな絵を描くかはその次の段階の話だということを頭に入れておいてください。
とにかく悪い習慣やクセをやめよう
話を戻します。
前述の例えを踏まえると、現在発声練習を頑張っているのになんだか伸び悩んでいる人、その人は声を出すための基本の身体の使い方・鉛筆の握り方が間違っています。
即ち、声を出す際にどこかに余計な力が入っているもしくは必要な部分の必要な力を避けているのです(それらをより安定して効率的に作用させるのが ”姿勢” なのですがそれはまた別の機会に)。
間違った発声を体験してみよう
試しに次のことに挑戦してみてください。
2.手のひらでギュッと包み込む様に握ります
3.そのまま腕全体に力を込めて字を書いてみましょう
4.できるだけゆっくり丁寧に
するとどうでしょう?
気をつければ気をつけるほど、安定させようと力を入れれば入れるほど手は震え、字が崩れていきます。
これではきれいな字は書けませんね。
たくさん力を使う分腕が疲れるのも早いと思います。
大きな声や高い声を出すとすぐに声がガラガラになる、喉を痛めるといった人はこのような状態に似ています。
間違った握り方をしているのに自分で気づいていない。
でも気持ちだけは誰にも負けない。
だから動かし方に集中する。
上手な字を書こうと震える手に力を込めて、目の前の一文字一文字を睨みつけながら集中して手を動かす。
さて、こんな人がこのまま努力すればいずれ書道家になれるでしょうか?
その答え、そしてどうすればいいか、みなさんはもうおわかりですね?
そうです。
直ちに正しい握り方に持ち替え、どんなにしっくりこなくても、初めは上手く書けなくても、その握り方で繰り返し練習することが大切です。
握り方を変えたからといっていきなり自在にきれいな字を書けることはありませんが、それでも、間違った習慣に惑わされず正しい手段を身につけることが大切なのです。
遠回りなようでこれが一番近道であることはきっと想像しやすいでしょう。
おまけ・力んじゃう系の人へのチェック項目
以上を踏まえた上で例として、
発声に悩む人、特に余計な力が入ってしまい高い音が出なかったり大きな声を出そうとするとすぐに声が枯れてしまう人に多く当てはまる項目をいくつか用意してみました。
具体的な原因や解決方法は人によりますが、自分で練習していてこういった原因に心当たりがある人は “やめる練習” が必要です。
焦らず、
どんなに違和感があっても、
まずは正しい鉛筆の握り方を覚えましょう。
発声練習とはいい声をだすための練習だけではありません。
身についた間違ったクセを正しく効率の良いものに直し、必要な操作を訓練し、無理なく自在に操れるようにする。
これが”発声練習”のより的を得た説明といえるでしょう。
・上手くいかないならやり方を変えるべし
・声の出し方は鉛筆の持ち方・動かし方に似ている
・間違った握り方をしていてはどんなに集中しても効率よく上達できない
終わりに
しかし、頭ではわかっていても慣れ親しんだ握り方を変え一から文字を書く練習をするということは多くの人にとってとても不快です(→新しいことを始めてもつい失敗する理由と3つの解決法)。
気がつくといつもの間違った、間違っているけど安定している(と脳が思い込んでいる)状態に戻ろうとします。
そのときは、この鉛筆握りの例えを思い出してください。
違和感に挑戦し、違和感に負けず練習を続ければ必ずあなたの練習は実を結ぶことでしょう。