人前で話す時手の位置に困る、どう動かしたらいいか分からない、といった人のためにお話しします。
こんにちは、ボイストレーナーの入来院真嗣です。
話し方の悩みは人それぞれ。今回は内容ではなく動作のお話しです。なぜ悩むのか、どんな動きを意識したらいいのかを具体的にご紹介します。
・例示動作と表象動作
・意識的に使ってみよう
何もしないって難しい
そのまま正面を向いてみましょう。
きっとなんてことはないと思います。
急に落ち着かなくなったと思います。
慣れていない人ほど、人前で話さなきゃいけないシチュエーションであったり、舞台でただ ”立って” 相手の話を聞かなきゃいけないシーンであったりすると途端に自分の指先が気になり、落ち着かなくなってくるのです。
理由は様々です。
“何かしなきゃ” という気持ちだったり、心理学的な意味での自分を落ち着かせようとする表れだったりします。
全国放送のテレビドラマや舞台の脚本も務めるとある先生のお話によると「技術のない俳優ほどポケットに手を突っ込んだり腕を組んだり、役と関係ないところで自分が楽したいために好き勝手する」そうです。
意識すればするほど、”何もしない” って難しいですね。
動きの意味を知って意識的に動かしてみよう
一番いいのは何もしないことです。
これから『例示動作』『表象動作』という二つの動作について説明しますが、”何もしない” が土台にしっかりあった上でこの2つを適切に使えると話し方の印象、効果は格段に違ってきます。
しかし、少なくともこの2種類の動作があることを知った上で意図的に身振り手振りを加えることができると、心の安定も多少なり増えていきます。それは結局、話し方の印象の向上につながります。
それではみていきましょう。
例示動作
例示動作とは “言葉と一緒に使う” 動作のことです。
何かを話しているとき、その話をより分かりやすくするための仕草を意味します。
「釣った魚が “こんなに” 大きかった」
「”あそこ” の荷物を持って “あの辺り” まで運んでください」
「”もちろんです “。一緒に頑張りましょう」
大きさを説明するために両手を大きく広げたり、場所を示すためにそれぞれの箇所を指し示したり、相手に対して同意を示すために首を縦に振ったり。これらは全て『例示動作』です。
悪い例もあります。
誰かに対して怒りの感情を露わにしているときに、言葉と同時に机を叩いたりするのも例示動作の一例です。
使い方ひとつで印象が良くも悪くも変化するので、スマホの動画機能などで自分のスピーチを録画して、客観的にどう見えるか研究しましょう。
自信を見せたいなら、大きく動かそう
同じ動作でも自信や説得力、活発さを表現したい場合には、積極的に動きを大きくしてみましょう。
また、複数人が相手の場合、近くの人と遠くの人で身振り手振りの大きさを変えることができるとあなたの印象がよくなります。逆に一対一の場合、大袈裟すぎる動作はやりすぎになる可能性があるので注意しましょう。
その他注意点
意図していない情報を与えていないか気をつける必要があります。
具体的には、良かれと思って行っている動作がかえって自分の印象を悪くしていないかという部分です。
例えば、分かりやすく伝えようとするあまりずっと手を動かし続けている人。
動かしてはいるものの、動きがとても速くわちゃわちゃしている人。
これは、落ち着きのなさ、頼りなさにつながる可能性があります。
動作はあくまで話し方とのかけ算です。
ひとつ一つの動作を意識していい話し方を目指すのは大切なことですが、動作を気にするあまり話し方そのものがテキトーになってしまわないよう気をつけましょう。やはり録画と確認が必須です。積極的に利用してみましょう。
文化圏によって意味が変わる場合があるので注意する
有名な例として、日本人が首を横に降る時は “NO” の意思表示だけど、アラブ人にはこの動作が “YES” の意味になります。
文化圏が異なる相手との会話では注意しましょう。
表象動作
表象動作とは、言葉と一緒ではなく “単独で使う” 動作のことです。
決められた言葉、意図を言葉を発することなく伝えます。
・ダイビングで浮上する際の合図
・野球のサイン
・返事代わりのピースサイン
表象動作は前もってその形と意味の共有が必要です。
野球のサインなどは同じチームでなければ理解することはできません。
また、ピースサインは有名な話で、国によってはピースを裏返すことで相手への侮辱や挑発を意味したり、ギリシャでは裏返さなくてもピースサインそのものが相手への侮辱の意味になるそうです。
このように、同じチームや文化圏の人物にしか通じない表象動作ですが、逆に言えば、意味が共有できている相手とのコミュニケーションにおいて使わない手はありません。
コミュニケーションにおいて、たくさんの言葉より一回のサムズアップ(親指を立てるジェスチャー)が、人差し指を一本口元に近づける動作が強い意味を持つことがあるのです。
その他注意点については、例示動作とほとんどお同じです。
動くなら意識的に、損をしない動作を
人前に立った以上身体の動きは全て意味を持つと考えてください。
猫背だったり、意味もなくわちゃわちゃ手を動かしたりすると自信のない印象を際立たせてしまうことになります。
必ず、動画で確認しましょう。
一番損するのは『やっている”つもり”、できている”つもり”』です。動画を撮ることで自分を客観視できれば、それは一番の練習方法になります。画面の中の “人から見えている自分”、これが全てだからです。
自分が動いているところを無理に止める必要はありません。なぜ動いたのかを確認し、例示動作など自分の言葉を補足しているような動きだったらより明確に、逆に印象を悪くしそうな動きだったら他の動きに変えられないか考えてみてください。
余計な動きはしないのが一番ですが、どうせ動くなら、自分が意味を持たせたい動きを意識しましょう。
最後に
人前に立った以上、なんとなく動いていた動作は全て意味を持ちはじめます。
余計な動きをしないに越したことはありませんが、難しいなら、録画して、自分を客観視し、積極的に動きに意味を持たせていきましょう。