ボイストレーニング・レッスンを受け始めたばかりの人によくされる質問の一つです。どのくらいの期間練習すればうまくなれるか。一日何分練習すればいいか。少し前に「プロになるには自分の限界をほんの少し超えた練習を一万時間」なんて言葉も話題になりましたがここでハッキリしておきましょう。
結論:時間で答えられるもんじゃない
身も蓋もありませんがこれが真実です。
もちろん全国のボイストレーニング講師や受講生にアンケートをとり平均値を出すことは不可能ではないでしょう。しかし、それだけ大掛かりな調査をしても出てきた数字もあくまで目安にしかなりません。結局は講師と生徒のそれぞれの能力・やり方・相性で大きく変わるでしょう。
もしあなたが、何時間勉強したら東大に入れますか?と尋ねられたら何と答えるでしょう。
どのくらい練習したら料理上手になれますかと聞かれたら?
時間じゃないことはハッキリわかると思います。一日の中でどれくらい時間をさけるかも人それぞれですし、得意不得意でも変わるでしょう。そしてこれが一番大切なことですが「やり方が間違っていたらどれだけ時間をかけても無駄」です。
こんなに勉強してるのに成績が上がらない、と言っている人のほとんどが勉強の仕方が間違っています。今のやりかたで成長できないのなら、やり方を変えないと何も変わりません。にもかかわらず、こんなに頑張っているのに、こんなに時間を割いているのに、と不満をこぼす人はとても多いのです。
歌に関しても同じです。
諸筋肉が健康的に最低限機能している人なら間違った使い方を正すだけで、言ってしまえばたった一回のレッスンで改善することもありえます。
しかしこれはあくまで一定の条件を満たしている生徒が積極的に今までの習慣を手放し違和感と闘いながらも新しいやり方に挑戦できた場合です。どれだけ身体的な条件を満たしていても自身の習慣と違和感に負けてしまえば一生かかっても成長できません。
一方歌に関して苦手意識を持っている人のほとんどは、その間違った習慣と身体の使い方から本来機能しなければならない筋肉もそれを支配する神経伝達も弱いです。例えるなら正しい鉛筆の持ち方をしても利き腕と逆の手で持っているような状態です。綺麗な字が書けるようになるには小学生の頃のように、まず何度もなぞったり書き取りをして動かし方を学ばなければなりません。歌においては発声練習がこれにあたります。
早く上達するには?
では早く上達する方法はないのでしょうか?
あります。
ゴールを明確にし、新しいやり方に積極的に挑戦することです。
誰か先生に習っている方は積極的に先生の真似をしましょう。先生が指摘する言葉にだけ気を配るのではなく、その言葉と先生の実演からよりゴールを明確に想像して挑戦しましょう。
書籍で勉強している方も可能な限り情報を把握し、ゴールを明確にしましょう。素敵なものを作りたい・上手な歌を歌いたいではなく、素敵なものとは具体的にどんなものか・上手な歌とは具体的にどんな状態か、しっかり想像しましょう。
一番いけないのは自分でゴールをはっきりさせないまま、本を読めば、レッスンに通えばなんとかなると思っている人です。ある程度なら大丈夫ですが、例えばプロレベルを目指している場合はそうはいきません。そのままでは夢が叶う確率は決して高くないでしょう。
焦らず、丸投げせず。
今一度自分が目指しているゴールとその過程をハッキリさせ、考え直してみてください。