胃の上部や首を硬くする強固な支え、真っ白になっていく視界。
その力、本当に必要ですか?
こんにちは、ボイストレーナーの入来院真嗣です。
感覚って人それぞれで難しいですよね。
今回は年間1000件以上レッスンをしている中で共通してみられる、効率の悪い発声時に見られる状態とそこから抜け出すヒントについてお話しします。
ボイトレで伸び悩んでいる人が壁を乗り越えるきっかけになればなと思います!
こんな感覚を持っている人は要注意。
まずは初めの質問に答えます。
胃の上部や首を硬くする強固な支え、真っ白になっていく視界、必要ありません(*画像は無関係です。
腹直筋の過度な緊張は必要ないどころか発声の負担です。(→腹から声をだせと言われたときに気をつけたいたった1つのこと
また、高い音になるにつれ目を閉じ真っ白になっていく世界もあまりよくありません。
自分の感覚に集中しているようで実は自分でコントロールすることを手放し悪癖に身を任せている状態です。
高い声が苦手、苦しいという人はこのように悪い癖や余計な操作をたくさん抱えています。他にもたくさんあるので箇条書きであげてみましょう。
こういう習慣はありませんか?
・音が高くなるほど舌が喉の奥に引っ込んでいく
・舌が硬くなり動かせない
・顎に力が入って喋りづらい
・音が高くなるほど足の感覚がなくなる
・音が高くなるほどお腹に力が入って筋トレばりに疲れる
・音が高くなるほど声のボリュームが大きくなる
・どんどん首が前にでていく
こんなことが? と思う方もいるかもしれません。
特に後半、目を閉じたり、どこかを向くことがいけないなんて信じられないですよね。
もちろん表現の一環として身体が動く分には何も問題ありません。
発声に問題なければ何をやっても正解です。
ここでの問題は音が高くなったり声が大きくなったり、『特定の条件下で必ず同じ動き、クセが出ていないか』ということです。
効率のいいバランスが大切
声を出すとき、たくさんの筋肉が参加しています。
物を投げる時や椅子に座る時もそうですね。たくさんの筋肉がそれぞれのお仕事をしてくれます。
そんな時、余計なことをしていると疲れてしまいます。
小指を立てることも万歳することも、やりたければやって構いません。しかし、物を投げる時、椅子に座る時、必ず必要な行為ではありません。
発声も同じです。
特定の条件下で同じクセ、本来やらなくてもいいことをやっていないでしょうか?
一つ一つ、上記のポイントを読んで振り返ってみてください。
また、当てはまるものがなかった方も、何かをやった時必ずこうなるというクセがないか一度考えてみましょう。
なぜやめられないのだろう?
しかし、自分ではなかなか気づきにくいものです。
そしてどんなに余計な習慣や悪い癖を指摘し改善案や練習法を提示しても、生徒さんの半分くらいはなかなか今までの習慣を手放せないのが現状です。
それは「声を出す」という行為があまりにも日常的な行為のため自身の使い方を ”普通” だと思ってしまっていることが原因です。
自分の声の出し方と違う感覚や結果を意識させられても違和感しか覚えず、自分の出し方・使い方の中から違和感のない範囲で言われたことをやろうとするのです。
結果、改善を感じられず、成長も微々たるものになります。
上達したい人は声を出す際の筋肉のバランスが一つではないことを知らなければなりません。
焦らず声で遊んでみよう。
全てを手放すトレーニングができない人は、まず遊んでみましょう。
負担の少ない無理のない音程で、モノマネ気分でいろんな声を出してみます。
ここにあげたのはほんの一例です。
繰り返しますが正しい発声を覚える練習というわけではありません。
大切なのは筋肉のバランス一つで音が変わると知ること。
同じ音で色々なパターンを試してみましょう。
そして、自分の身体のどこが緊張していてどこがリラックスしているか、響きの強いところはどこか、細かく感じてみましょう。
やればやるほど、同じ音なのに色々なパターンが作れることがわかると思います。
リラックスしている場所を逆に緊張させてみたり、緊張させているところを逆にリラックスさせてみたり。
一つの音を鳴らすだけでも様々な身体の使い方があって、それが全て声に影響するということを知ってください。
同時に、あなたの声の出し方もその中の一つの選択肢にすぎないとわかれば大成功です。
現在悩みがある以上その声の出し方を捨て、他の選択肢に切り替えることは何も不自然なことではありません。
最後に
一つの音で遊び尽くしたというかたは音階で遊んでみても良いかもしれません。
音が高くなるにつれあなたの身体に起こる様々な緊張、収縮。それらは本当に必要なのかどうか、一つ一つやめながらじっくり試してみましょう。
焦らず、結果ばかりをすぐに求めない方が実は近道だったりすることもあるのです。
あなたの練習がより効率のいいものになりますように。