ボイトレはしたい。お金はかけたくない。頑張っていることは知られたくない。そんな人たちに読んでほしいお話です。これを読めば独学で練習する際気をつけるべきポイントが分かります。練習効率が上がるので是非お付き合いください。
こんにちは、ボイストレーナーの入来院真嗣です。
ボイトレってお金を払って習うもんなのか疑問だ、という人が沢山います。
……気持ちは凄く分かります。
ありがたいことに最近は Youtube などで無料で沢山のレッスン動画がアップされていて、自分の気になる要素だけ重点的に、繰り返し、無料で学べる時代になりました。
生の発声、共鳴を感じるとまではいかなくとも、高音質・高画質で上手い人の歌を参考にできる時代です。
今回はそんなお金をかけずにボイトレしたい人、独学で歌が上手くなりたい人が気を付けるべきポイントをいくつかご紹介したいと思います。
これを読んで、変な癖をつけたり無駄に停滞する時間を少しでも減らすことができるようになりますように。
・ネット掲示板や歌の上手い友人の言葉を鵜呑みにしない
・出来ている前提で話を進めない
録音は絶対に必要
あなたは自分の歌声を録音して聞いてみたことはありますか?
高価なICレコーダーを用意する必要はありません。スマホのボイスメモ機能で十分です。
中には自分の声・歌声が好きじゃないから聞きたくないという人もいますが、その辺に関するお話は別記事で更新したのでそちらをご覧ください↓
こんにちは、ボイストレーナーの入来院真嗣です。先日うちの猫がこんなツイートをしました(先生はたまに、私(僕)プロになれますか?って質問されるらしいんだけど、これって変だよね?なれませんっていったら諦めつくのかな?なれますって言ったら[…]
客観的にどう聞こえているかを把握する
録音した声というのは、簡単に言うと普段他の人が聞いているあなたの声です。機械によって音質の差こそありますが、どんなに違和感があっても、どれだけ自分の声が嫌いでもこれだけは変わりません。
上達の第一歩は”現実を知ること”です。
上手さ下手さは関係ありません。
まずは現実問題、自分が今どういう状態なのかを知ることが大切です。
それによって、では短所をどうやって改善していくか、長所をどうやって磨いていくか計画をたてていくことができるようになります
すぐには消さない
録音してすぐ聞き返しても得られるものはたくさんあります。
しかし、良くも悪くもそこにはまだ”熱”があります。
・自分がどういう気持ちを込めたか
・どう歌いたいと思って表現を加えたか
本当はそれらが音として満足のいくレベルで表現されていないのに、自分のなかではどういうつもりで歌ったかという気持ちが残っているため、補正され、できているように聞こえてしまう場合があるのです。
そこで、数日放置します。
データを消さずに最低3日。
できれば一週間くらい、途中で一度も聞き返さずに放置しておきましょう。
すると、日常を過ごし他のことに気持ちを動かされたりしているうちに歌った瞬間の気持ちや熱量は良い意味でどこかに消え去ってしまい、次に聞くときは冷静な気持ちで過去の自分と向き合えるのです。
それでも良いと思えるところはあなたの武器になり得ます。武器とまではいかずとも、自分の好みを知ることができるでしょう。
その時少しでも気になる不安定なところは、今のあなたでも分かるレベルのあなたの課題です。
どこがどう気になって、どう変化したら納得するかを考えられるとそれは上達に繋がっていくでしょう。是非試してみてください。
これを繰り返していくうちに、自分の声に慣れ、間をおかずともその場で冷静に判断できるようになったら儲け物です。それはあなたの耳がとても成長している証拠です。どんどん新しいことに挑戦していきましょう。
成長記録にもなる
もしも容量に余裕があるなら、定期的に録音した音源をずっと残しておくこともおすすめです。
すぐ消したいんだけど……
ボイストレーニングを頑張っていると、ある日不安になってきます。
・自分は本当に成長できているのだろうか?
・今の練習方法であっているんだろうか?
そんなとき、昔の音源が残っていると一つの指針になります。
あの頃よりはここが上達している、など勇気付けられる場合もありますし、全く変わっていないなら練習方法を見直すきっかけにもなります。
可能なら過去の録音物を消さずに残しておきましょう。
ネット掲示板に投稿して意見を求めない
気を付けるべきことその2です。
その1の最後にも触れましたが、ボイストレーニングを行っているとある日不安になってきます。
そして人によっては、ネット掲示板などで自分の歌声を投稿しアドバイスを求めたりします。これが厄介です。
絶対悪いというわけではありません。
そうやって上達していって今では有名アーティストになり大金持ちになった人も確かにいます。が、年間1000件以上のレッスンを生徒と行っていくなかで個人的にはあまりおすすめできないという結論に達しました。理由は以下の通りです。
指摘が適切である保証がない
ある生徒のレッスンを始める前、実際にアドバイスを求めて投稿した掲示板を見せてもらったことがあります。そこにはとても偉そうな口調で、何々ができていないとか、もっと何々すべきといったアドバイスがたくさん書かれていました。
これらを書いた人は善意から、本当に自分なりのアドバイスをしているだけかもしれません。しかし、そのうちの半分くらいは間違っている、もしくは間接的には影響しているかもしれないけれど直接的な原因はそこじゃないだろうといったものばかりだったのです。
これをすべて鵜呑みにしてしまった生徒はどうなったでしょうか。
前より喉を痛めやすくなり、上達を実感できず、歯痒い思いをした結果レッスンに通うことを決意しました。
直接的な原因を取り除いたことでその生徒は喉を壊すことなく、自分なりにネット配信や全国ライブを行うようになりましたがそれは別のお話。
自分の人生をしっかり自分で舵とれて、何を言われようと話し半分で聞き流し適切に取捨選択できる人であればあるいはそういう手段もありかもしれません。顔も出さず、お金もかけずに知識がある(or あるらしい)人からアドバイスがもらえるのですから。
しかし、この方法は常に故障と隣り合わせだということを忘れないでください。
独学で練習を行うなら信じるべき、責任を持つべきはいつだって自分です。喉を壊してしまってもネットの書き込みは責任をとってくれません。他人に左右され過ぎないよう注意しましょう。
歌のうまい人が指摘のうまい人ではない
じゃぁどういう使い方をすればネット掲示板でアドバイスをもらったときに自分を成長させられるのか。見極め方が気になりますよね?
残念ですがそんな都合の良いものはありません。
有益そうなアドバイスを自分で試してみて、上達したならそれが正解だったというのが身も蓋もない答えです。
そしてある意味一番危険なのは、ネットの匿名情報よりも身近な歌の上手い友人のアドバイスです。
なまじ本人の歌唱力が高いからアドバイスはきっと正しい、できないのは自分が間違っているからだとがむしゃらに頑張りがちですが、元々ある程度歌える人の方が自分の感覚だけでやっているので、歌えてはいるけれど指摘は的外れだったり他の人だと参考にならない場合が多いです。(そもそも感覚だけで練習するのはお勧めしないのですが)
自分一人で練習するときは、良くも悪くも最終判断を自分にしてください。
友人アドバイスを取り入れることは有りですが、ある程度の期間意識して上手くいかなかったらどこかで舵を切りましょう。
出来ている前提で話をすすめない
気をつけるべきことその3です。
腹式呼吸、ミックスボイス、鼻腔共鳴、ボイトレで広く知られる用語は沢山あるのですが、それを一つだけ切り取って “これは出来ている” という前提で頑張らないほうがいいです。
よくある間違い
これはあくまで沢山の人を見てきた中での経験則でしかないのですが、自己流の練習を重ねてきた人はレッスンに来た時によくこう言います。
「ミックスボイスはできるんですけど、ヘッドボイスができないんですよね」
発声は様々な筋肉の絶妙なバランスで成り立っています。
それは自転車のギアのようなカチッカチッと切り替える段階調整ではなく、筋肉の伸縮による無段階変化です。カチッ、これはミックスボイス、カチッ、これはヘッドボイスという風にはいきません。
いかない以上、その “出来ている” という判断はとても怪しいものです。
実際発声をチェックしていくと、本人ができていると思っていた音域の発声の段階で無理が重なり、結果として声が繋がっていかない状態でした。
仮に出来ているならより高みをめざす
ただ、突き放すような言い方をしましたが、”できている” けど “もっとできるようになりたい” という気持ちがあるのであればそこまで問題ではありません。
問題なのは出来ている前提で特定の部分の筋肉の使い方を変化をさせようとしないこと。
凝り固まった意識、身体の使い方は確実の他の使い方の邪魔をします。
独学の人はより柔軟に、より効率の良い状態を目指しましょう。
さいごに
現在は情報だけであれば欲しいものは大体手に入ります。
また、事務所に所属しなくても一人でも発信し続け、味方を増やしていけば売れる時代です。
試行錯誤と向上心さえあれば独学でも成長できるでしょう。頑張ってください!
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