お腹から声の意味がわからない。
そんな人に読んで欲しいお話です。
こんにちは、ボイストレーナーの入来院真嗣(@contro_re)です。
普段はプロや歌の専門学生、その他夢に向かって頑張る人たちと一緒に毎日レッスンしています。講師業を始める前は自身も事務所を通して全国CMナレーションやテレビ出演などを経験してきました。
『今回のテーマ』
・お腹から声を出せと言われたとき注意すること
・お腹から声を出すための呼吸練習
・お腹から声を出す練習で気をつけること
今回は『お腹から声を出す』がテーマです。
お腹に声帯はついていないのに何故お腹から声を出せなんて言われるのでしょう?
また、具体的に何ができていないからお腹から声を出せと言われたか考えたことはありますか?
この記事を読めばどういう人がお腹から声出せと言われやすいか、言われたらどう考えればいのか、具体的に何に気をつけて練習すればいいのかがわかります。ぜひ最後までお付き合いください。
お腹から声を出せと言われたら
まずはお腹から声を出すというのは何を指しているのかというお話です。
先ほども述べたとおり、そもそも声帯は喉にしかついておらず、お腹に声(音)を生み出す装置はついていません。
では何故お腹から声を出そうというのでしょうか?
それは、『お腹周りの筋肉で “呼吸” をコントロールしたいから』です。
呼吸とお腹周りの筋肉の簡単な仕組み
そして息を吐くと縮んだ横隔膜が戻ろうとします。
自然呼吸はこれでおしまいなのですが、歌などの “努力呼吸” と呼ばれる身体の使い方では、この横隔膜が戻ろうとする動きを補助するために腹横筋や腹斜筋といったいわゆる『体幹』に関わる筋肉が適度に働く必要があります。別名・呼吸補助筋です。
体幹が安定すれば喉周りの余計な力を抜いてもバランスは崩れず、声は安定します。
しっかり呼吸補助筋・体幹の筋肉を使って身体を安定させ、身体も喉周りも最大限リラックスしようというのが『お腹から声を出そう』の目的の一つです。
あくまで理想とゴールがずれていると思えばいい
ですので、もしあなたが誰かから「もっとお腹から声を出したほうがいいよ」と言われたら、小難しいことは考えず何か自分の発声に課題があるんだなくらいに考えておけば大丈夫です。
あなたの発声に余計な緊張や余計な脱力があるから「お腹から声を」と言われていると考えましょう。
そもそも講師だって身体の中が見えているわけではありません。
様々な経験から、身体のどの部分をどういう風に使ったらこんな声になるというのを知っているので教えることができるのです。当たり前ですが講師だからといってお腹に声帯はついていません。
お腹から声を出せと言われても理由は様々
そしてこの「お腹から声出せ」というキーワードは実に曖昧でいろんな場面で使われます。適当にとりあえずで言っている場合ではない限り理由は様々です。
喉周りの緊張で響きが浅く薄っぺらい
声帯を閉じる感覚が嫌で避けてしまい、裏声を多用しすぎている
脱力を誤解していまい息漏れは多いものの喉には力が入っている
あくまで一例ですが、講師の人はこれらの症状をハッキリ確認できていても細かく説明せず、時として
なんて一言で済ましてしまう場合もあるのです。
なので、必ず質問をしましょう。
どういう意図で言われたか原因がハッキリすれば、自分が気をつけるべき部分や改善方法もハッキリしてきます。
ボイストレーニングで複数の先生のレッスンを受けることは割りとよくあります。学校の仕組みで自由に先生が選べたり、いくつかの授業を受ける上で自然と複数の先生から教わったり。また、自分でネットや本で調べて練習している人も大体が複数の先生から教わ[…]
お腹から声を出すための呼吸練習
それでは、お腹から声を出せと言われた人のための具体的な呼吸練習の紹介です。
言われてなくても『お腹から声を出したい』と思う人は練習してみてください。
腹直筋は固めない
腹直筋とは身体の外側、体脂肪率が低くしっかりトレーニングしている人だと六つに割れる一般的に『腹筋』と呼ばれる部分です。
試しに今あなたができる最高の力で腹筋をガチガチに固め、緩めないようにしながら歌を歌ってみてください。きっと歌えないはずです。
腹直筋は片方が肋骨と繋がっています。
この筋肉がガチガチだと肋骨を下に引き下げたまま自由に動かせず、呼吸がしづらくなってしまいます。呼吸をコントロールして声帯を振動させる『歌』にとってこれは天敵です。
また腹直筋は “抗重力筋” という姿勢を作る筋肉の一つで、身体の前側を担当している筋肉でもあります。姿勢が崩れると喉のバランスも変わり声が出しづらくなるのはイメージできるでしょうか?
基本的にまず腹直筋にはなるべく余計な力を加えない意識を持ってください。
呼吸練習①大きく伸びながらドッグブレス
・手を組んで「あー疲れた」といった風にぐぅーっと真上に伸びましょう
・耳、肩、腕が同じラインになるよう注意します
・胸も背中も広いのを感じながら口を大きく開け、喉の奥を乾かすように「ハッハッハッ」と犬のように息を吐いてください
・10〜30秒ほど挑戦し、下っ腹のあたりが連動して動くのを感じ、疲れたらOKです。
人によって伸びやすい筋肉の向きや動きがあるので、手を伸ばすとき、掌が天井を向いていても頭を向いていてもどちらでも構いません。しっかり伸ばして胸や背中の広さを大げさに確保してください。
胸周りの広さと安定があり、お腹を使って自然に呼吸ができていたら成功です。
実際に声を出すときも胸周りや喉周りはただただ広くリラックスしていて、お腹周りの筋肉の動きと連動して声が出せればかなり響きは豊かに大きくなることでしょう。
呼吸練習②IAP呼吸法
IAP呼吸法とは体幹の筋肉を意識的に作用させて腹腔内を安定させ、姿勢を良くしながら全体のバランスを整える呼吸法です。やり方はとても簡単なのでぜひ毎日挑戦してみてください。
・上半身を真っ直ぐにし、自然でいい姿勢を保つ
・ゆっくり息を吸ってお腹周りを膨らませたら、膨らませっぱなしでゆっくり息を吐きましょう
・姿勢が崩れたり、肩や胸が大きく動かないよう注意してください
腹腔内が安定し姿勢が自然なバランスになれば、少しずつ喉周りなどの余計な力を抜くイメージもつきやすくなります。
この呼吸法は自然呼吸とは明らかに違う使い方をするのでボイストレーナーによっても歌唱中意識させる人とさせない人がいます。
しかし姿勢の安定と呼吸筋の強化という意味では決して損はしない運動なので声を出せない、出さないボイトレをしたい時などは積極的に挑戦してみてください、
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お腹から声を出す練習で気をつけること
お腹から声を出すために必要な呼吸の練習方法を紹介しました。
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一部分だけ頑張りすぎないようにしましょう。
練習しながら、以下の2点は何度も確認してみてください。
背筋を伸ばそうとして反り腰になっていないか
身体はバランスでできています。
どこかが頑張ると他のどこかが補う関係になるのです。
胸を張って真っ直ぐ伸びるというのは一見いい姿勢に見えますが、長時間続くと背中側の筋肉の緊張が多く誰でも疲れてしまいます。背中側の筋肉が緊張すると深い呼吸もしづらくなり、呼吸がしづらくなると発声にも影響が出るでしょう。
また反り腰になって筋肉だけで姿勢をキープすると首にも力が入りやすいため、これも発声の邪魔になります。身体は背骨で支えるイメージをもち、胸周りは前も後ろもリラックスして広く保っておきましょう。
首が縮んでいるのに顎だけ引いていないか
ボイトレの情報を自分で集めるタイプの人、自分で頑張れる人は『いい発声のためには顎を引こう』という情報だけを取り入れ徹底しすぎて、首が縮んでいることに気がついていない人が多くみられます。
顎を引くこと自体は決して悪いわけではないのですが、首が縮んでいる状態で顎を引いてしまうと、喉を含め首の中の様々なものの自由度が下がり結果として声が出しづらくなってしまんです。
試しに肩を物凄く上げて首をすくめた状態で顎を引いてみてくだい。
……いい発声ができると思いますか?
『いい姿勢』というのはあくまでバランスです。
全体を一つ一つ見直して挑戦しましょう。
お腹から声を出す筋肉をしっかり鍛えたい人は
それでは最後にお腹から声を出したい人が気にする腹横筋や腹斜筋を鍛える方法の紹介です。
それぞれのトレーニングをしっかり呼吸しながら、あるいは声を出しながら練習するとより力強い発声ができるようになるでしょう。
各種プランク
プランクとは身体を一枚の板にするようなイメージのトレーニングです。
腰が反ったり山なりになって、腕と足の筋肉で身体を支えないよう注意しましょう。
しっかりとプランク(板)になったつもりで真っ直ぐをキープし、30秒から1分その姿勢を維持しましょう。
このとき強めに息を吐いたり、キープしている時間をしっかり声を出してカウントしたりするとお腹から声を出すという感覚が掴みやすくなります。
足上げ
足上げはとてもシンプルです。
寝そべって、背中が反りすぎないよう注意しながら両足を少し浮かせてキープします。
地面に近いほどキツくなります。また、上下に動かしても効果があるのでいろいろ挑戦してみましょう。
バイシクルクランチ
バイシクルクランチは少しだけ複雑です。
①仰向けになり、ふくらはぎが地面と並行になるイメージで足を上げてください。
②両手を頭の後ろに回し上体を少し浮かせます。このとき頭を手で支えないよう注意しましょう
③片足を真っ直ぐ伸ばし、片足は膝を胸に近づけます。このとき、胸に近づけた側に膝に向けて上半身も捻って近づけましょう。イメージとしては胸に近づけた膝と反対側の肘を近づける動作です。
④近づけたら元のポジションに戻り、逆の足と肘で同じように身体を捻ります(肘は近づけるようなイメージというだけで無理に腕だけを動かす必要はありません。
上の二つはどちらかというと腹横筋に効くトレーニングですが、バイシクルクランチは腹斜筋や腸腰筋に効いてきます。
どちらも体幹を鍛える、身体を支える、お腹から声を出すというために必要な筋肉なので日頃からある程度鍛えておくといいでしょう。ムキムキだから歌が上手くなるということはなくあくまで身体の使い方でしかないのですが、日々の体調管理や健康といった意味からも最低限の運動はしていた方がお得です。
運動が苦手な人はバランスボードもオススメ
バランスボードとは上に乗ってバランスを取ることで体幹を鍛えられるグッズのことです。
お腹だけでなく、大切なのは呼吸の筋肉と発声の筋肉の連動
今回はお腹から声を出すことについて様々な角度からお話ししました。
お腹から声を出せと言われた人はまず自分の発声の何がいけなかったのかを質問し、はっきりさせましょう。
その上で自分1人で練習する時などは、お腹周りの筋肉を意識した呼吸で感覚を養いましょう。
具体的に鍛えたい人はプランクやバランスボードなどがオススメです。
しかし、どれだけ呼吸筋を鍛え体幹が強くなっても、喉周りに余計な力が入っていると全く意味がありません。
あくまで大切なのは全身のバランス、呼吸筋と発声筋の連動です。
何か一つをがむしゃらに頑張るのではなく、一つ一つが協力試合素晴らしいものになるよう頑張ってみてください。コツコツと日々の積み重ねが大切です。
一人で練習してもいまいちわからない人はぜひレッスンにきて欲しいのですが、僕自身は体験レッスンを行っていません。
お金を払いたくない、もったいないという人は街のボイトレスクールがやっている無料体験レッスンがオススメです。近くになくても無料『オンライン』体験レッスンを行っているところもあるのでぜひチェックしてみてください。
歌が上手くなりたい。呼吸について理解を深めたい。歌における呼吸の練習方法はないか知りたい。そんな人に読んで欲しいお話しです。こんにちは、ボイストレーナーの入来院真嗣(@contro_re)です。普段はプロや歌の専門学生、その他夢に向[…]