誰かの真似になりたくない。自分だけの表現をしたい。のっぺりとしているから表現力がもっと欲しい。そんな悩みにお答えする第4弾です。表現力のことで悩んでいる人は是非この記事を読んでみてください。新しい視点が加われば、あなたの表現が変わります。
こんにちは、ボイストレーナーの入来院真嗣です。
プロやボーカルの専門学生など1000人以上を見てきた中で誰もが抱く悩み「オリジナリティ」
今回は理屈っぽい説明第4弾、リズム編です。第1弾、第2弾、第3弾はこちらをご覧ください
感情面からのアプローチは後日ご紹介します。(追記:更新しました! 歌う上で表現力を高めたい。なんとなく表現の幅が少ない気がする。何を意識して練習したらいいか分からない。プロは何であんな表現になるんだろう。そんな人のためのお話です。言葉への意識が変われば表現力は少しずつ身についてきます。是非最後まで読んで[…]
・リズム変化は子音と母音のタイミングや楽器の演奏に注目する
・引き出しを増やすためにまずは真似る
覚えておきたい!表現を作る4つの要素
まずは好きなアーティストの曲をご用意ください。
はい。それでは説明に入ります。
歌唱表現は大きく以下の4つに分類されます。
2. 音程の変化
3. 音質の変化
4. リズムの変化
一気に全部を覚える必要はありません。
一つ一つ仕組みを知って、意識しながら曲を聞いてみましょう。
今回はリズムに注目してみていきます。
どんな曲にも一定のテンポがある
リズム変化の話に入る前の大切なお話。
3拍子、
4拍子、
5拍子、
6拍子。
一曲の中には一定のテンポがあります。
リズム変化に関してはまず、このテンポの中でその他3つを意識する余裕があることが前提になってくるので、それが難しい人は知識として留めておくくらいにしておいてください。
基本リズムがブレた中で挑戦してしまうと、何をやってもその他3つの表現の変化が上手に聞こえなくなってしまいます。四拍子の曲を1・2・3・4と手を叩きながら口ずさむことができない段階の人は挑戦しないほうがいいでしょう。
また、リズムの変化は他に比べて変化の幅が限られ小さいので、それをきちんと聴きとる力が必要になってきます。
基本的に各種表現は、ピッチ(音程)とリズムがある程度安定していることが前提です。
それではみていきましょう。
リズムの変化はタイミングと細かさ
まずはリズムの変化一つ目 “タイミング” です。
タイミングには音そのものがぴったりのリズムではなく、早めに入ったり遅く入ったり、前後するパターンと、ぴったりのリズムなんだけれどその位置が子音か母音かというパターンがあります。
パターン1・わざとずらす
正直なところ、歌唱表現の中ではあまり使われている印象はありません。
例えば四拍子の曲で、リズム楽器が曲の雰囲気を作るために大袈裟に2拍目、4拍目をジャストタイミングで打たずに後ろにずらす、などは live でたまに見かけますが、現在主流の J-POP の歌唱表現において、僕の知る限りではほとんど見かけません。
また、ジャズなどにおけるスイングはズレの象徴じゃないかという意見もあります。
しかし、最近の研究では機械でその微妙なズレを修正を施したほうが、修正前より人はスイングを感じた、などの結果も出ていて、決してリズムのズレだけがスイングを感じる要因ではないということがわかってきているようです。
そこで、大切なのはもう一方、ぴったりのリズムの中での子音と母音の微妙なタイミングです。
パターン2・子音を乗せるか、母音を乗せるか
例えば童謡「かえるのうた」
誰しも一度は歌ったことがあることでしょう。
いち、にの、さん、はい、カーエールーノー
と歌い出す時、頭の1拍目ちょうどの所に [ k ] がくるのか [ a ] がくるのかで歌の印象が変わってきます。
日本語は基本的に母音で終わるため、歌でも無意識に母音を頼りにリズムをとる癖がついている人が多いです。
Lalah Hathaway – strong woman
例えばこの曲の46秒あたりから、タイトルでもある [strong woman] を連呼するのですが、あなたはリズムをどのように感じますか?
テクニックとして意識的に入れている人はほとんどいない(と思う)
今回のリズム変化はあくまで理屈としてのお話です。
憧れのアーティストに近づきたい場合このリズム変化について意識してみることも有用ですが、ある程度 “こう表現したい” があって発声上問題なければ、先にあげた3つの変化を意識している時に自然とこの些細な変化は現れます。
真似しているつもりがうまくいかないといった人は気分転換の新しい切り口として、この子音と母音のタイミングを意識してみるといいかもしれません。
演奏楽器に注目する
もう一つ。
ほとんどの人が、大好きな曲を知っている雰囲気のまま何となくで歌っています。カラオケをあまり聞いていない、聞いていたとしてもドラムのキックとスネアのようなしっかり刻んでいるところをうっすら聞いているくらいな人が多い印象です。
あなたの好きな曲に、楽器が何種類なっているか数えてみたことはありますか?
また、その楽器がどんな演奏をしているかじっくり聞いたことがありますか?
様々な楽器が演奏されている曲の前提でお話をしますが、試しにベースの音を聞いて、そのメロディに合わせて歌ってみましょう。そして次にギター、ピアノ、ストリングス、ブラスなど、同じテンポや曲の雰囲気を共有しながらもその刻み方・演奏の仕方は様々です。
様々な楽器が一つの曲を表現していて、それを感じながら、あなたもその一部になろうとする。難しいですがとても大切なことです。ぜひ挑戦してみてください。
好きな曲を聴いてみよう
さて。
ここまでで3つ(4つ)の変化についてお話してきました。呼吸、音程、音質、(リズム)。基本的にはこれらの変化の組み合わせで表現は成り立っています。
組み合わせは無限大ですね。
それではあなたが用意した曲の中で、歌手はどんな使い方をしているでしょうか? 次はその練習の仕方です。
ノートに書き出そう
少しずつ聴いて再現してを繰り返してもいいですが、できればノートにその曲の歌詞を書き出し、まずは自分が感じ取った変化を全て書き込んでみましょう。
それが厳密に正解かどうかは関係ありません。
自分なりに曲を聴いて、自分なりに判断して、再現しようと挑戦する。これが大切なんです。
ノートを見ながら繰り返し真似する
書き込んだら、あとは繰り返し真似をするのみです。
誰の真似にもならないオリジナルの歌唱を実現するために、まずは表現の引き出しを手に入れましょう。
選択肢を知っていればいるほど自分の好みが把握できます。
また、真似するうちに細かい表現操作を覚え理想に近い表現が可能になり、個性が出てきます。
最後に
今回はリズムの変化についてお話ししました。
理屈っぽい意識が苦手だという人はまた別の機会に、感情面からのアプローチについてお話しします。
あなただけの表現が見つかりますように。
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