筋トレはしない方がいいの?
そんな疑問にお答えします。
こんにちは、ボイストレーナーの入来院真嗣(@contro_re)です。
普段はプロや歌の専門学校生、その他夢に向かって頑張る人たちと毎日レッスンをしています。
講師業の前は自身も声優や俳優、音楽活動を行っていました。
『今回のテーマ』
・筋トレで歌が下手になることはない
・筋トレを取り入れてる人が気をつけたい発声感覚
・筋トレで歌が下手になったと感じたときに見直したいもの
今回は筋トレと歌の関係のお話です。
たまにテレビでも流れますが、一流のアーティストと呼ばれる方はみんな身体が資本なのでトレーニングしていますね? その一方で、ボイトレを始めたての人で “筋トレをしているんだけど歌いにくくなった” という人がいます。
今回は間違った方向に突き進むことなくより効率よく練習してもらうためにも、その辺のことについてお話ししたいと思います。
結論・筋トレで歌が下手になることはない。
最初に結論です。
筋トレをしていて歌が下手になったことは “筋トレ” が原因ではありません。
うん。
それは『余計な力も大きくなったから』ということにつきます。
例えば。
大袈裟に説明しますが、鍛えると6つに割れるといわれる腹筋、腹直筋に全力で力を入れて歌ってみてください。何もしてない時より歌いにくくなったと思います。
では質問です。
腹直筋を鍛え続けより強く力を入れられるようになった時、同じように全力で力を入れたらどうなるでしょうか?
歌いにくくなる?
身体には無数の筋肉があって、目的に応じて使い分けられています。ある目的のためにはしっかり使わなければいけない筋肉も、別のある目的のためには邪魔になってしまう場合があるのです。
毒と薬は紙一重
本来使うべき筋肉がしっかり働くようになったら、それは歓迎すべきことです。
しかし、抗重力筋と呼ばれる筋肉の中には腹直筋も存在します。
先ほど腹直筋を全力で固めて歌ってもらいましたが、とても声が出しづらかったと思います。
大切なのは使い方です。
筋トレしていて歌が下手になったと感じる人は、余計な緊張が単にましただけで使い方を変えていないため下手になってしまったのです。筋トレが悪いわけでなく、使い方が間違っているいう訳です。
筋トレをしてる人が気をつけたい発声感覚
具体的に誰がどんな余計なことをしているかは人それぞれ違います。
そんな中で、1000人以上みてきた中での目安として上手くいっていない人に多い “感覚” というものをご紹介します。
①明らかに仕事した感が喉に残る
これは腹直筋を固めすぎたり喉周りに力を入れすぎていたりしている人に多い感覚です。
同じ感覚でも、裏声が基本で柔らかい声しか出せない人が声帯をしっかり閉じ息漏れが少ない発声を目指す場合とは異なります。裏声しか出せないような人はこの感覚が間違いという視点はあまり当てはまりません。
余計な力が働いて本来使うべき筋肉と喧嘩している場合、身体が硬くなったり、喉が少し締まったような状態になった結果『あぁ、使ってる使ってる』といったような感覚になる人が多いようです。僕自身も声が1オクターブも出ない頃はその誤解をし続けていました。
少し力が入って硬くなっている状態を『よしよし、しっかりお腹を使って声を支えているぞ』『しっかり芯のある声を出せているぞ』なんて勘違いして間違いに気づけないのは危険です。
下手に筋トレだけをし続けて同じ感覚を求めにいくと、より一層余計な力が入るようになるので歌が下手になってしまいます。
②わかりやすく腹筋を使った感がある(腹直筋)
よく聞くキーワードとして有名なのものに『お腹で声を(息を)支える』『お腹から声を出す』というものがあります。
また、腹式呼吸を誤解し『お腹を膨らませることだ』と思い一生懸命身体の前側を意識した結果、腹直筋に余計な力が入りすぎる人が結構います。
実際確認してみないと正しく使えているかどうかはわかりませんが、わかりやすく力を入れ、”腹筋(お腹)使っているわー” と感じている場合、腹直筋の使いすぎである場合が多いです。
高音発声時にお腹に力が入り、前屈みの姿勢になる人、背中が丸くなる人はさらに高確率で腹直筋の使いすぎです。様々な場所が疲労し『歌った』という感覚が露骨に残る場合は①の感覚にもつながってくるので発声の見直しをしましょう。
③疲労が翌日まで残る
喉やお腹周りに翌日まで疲労が残っている人は要注意です。
筋トレ=負荷をかける→成長するみたいな感覚を発声にまで当てはめていると『歌いまくって喉を強くする』なんて発想になりがちですが、これはなかなかに危険です。
違和感がないのが一番ですが、少なくともその日数時間後には違和感がなくなっているのが理想です。きちんと見極めてくれるトレーナーが近くにいれば別ですが、無理な発声によりダメージが残っている状態と言えるので同じ発声を繰り返すと声帯ポリープや声帯結節などを引き起こしてしまいます。絶対にやめましょう。
『いやぁ歌った歌った』なんていう疲労感が上達につながるという考え方は基本的に根性論でしかないので避けるべきです。
筋トレで歌が下手になったと感じたら
はい。
まずは姿勢や呼吸、発声のバランスを見直しましょう。
例えば姿勢を作る抗重力筋はざっくりと僧帽筋・脊柱起立筋・腹直筋・腸腰筋・大殿筋・大腿四頭筋・下腿三頭筋などがあります。
難しい言葉を覚える必要はありませんが、ざっくりと『僧帽筋・脊柱起立筋・腹直筋』、つまり『身体の前側と後ろ側両方が作用している』というくらいのイメージは必要です。
人間の体は3D
当たり前ですが人の体は三次元、つまり立体です。ペラッペラの紙ではありません。
しかし力みやすい人のほとんどがその立体的な身体を意識することができず、声=喉という感覚で喉周りだけやたらと気にしたり、腹式呼吸というキーワードからお腹の使い方、つまり身体の前側ばかり気にしてしまっています。
やってみよう
①:肩が前に入らないように気をつけながら、両手を繋いで胸の前で輪を作ってみてください。
②:そのうえで両腕の付け根が背中側、肩甲骨や背骨辺りにあるようにイメージしながら息を吸います。
③:胸周りだけでなく背中周りも含め全体的に胸郭が広くなったら、それをキープしながら息を吐きましょう。首が縮んでしまわないように気をつけてください。
骨盤から耳の横くらいまで伸びる背骨とその周りの筋肉が身体を支えている意識を持つとより、腹筋や身体の前側の余計な力が抜きやすくなっていきます。詳しくはこちらの記事をチェックしてみてください。
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大切なのは使い方
今回は筋トレで歌が下手になった気がするという悩みについてのお話をしました。
大切なのは使い方です。
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悪い使い方をすれば大きな筋肉がより悪さを引き寄せるのですが、短絡的に「じゃあ筋トレしないほうが悪い筋肉を使いにくいの?」と考えないようにしましょう。
姿勢を作る意味でも筋肉はないよりはあったほうがいいのです。
筋肉があったからと言ってうまくなるわけではありません。しかし、充実した筋肉がある人が歌に適した身体の使い方を覚えると、バランスが悪かったり足りない筋肉がある人よりは圧倒的に成長が早いのも事実です。
自分の発声のどこが問題なのか冷静に見極め、効率の良い練習をしていきましょう。発声に悩んでいる人はレッスンお待ちしています。
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