十分歌ったけどまだボイトレをしてい。
そんな人に読んで欲しいお話です。
こんにちは、ボイストレーナーの入来院真嗣(@contro_re)です。
普段はプロや歌の専門学生、その他夢に向かって頑張る人たちと一緒に毎日レッスンしています。講師業を始める前は自身も事務所を通して全国CMナレーションやテレビ出演などを経験してきました。
『今回のテーマ』
・呼吸と身体の連動を身につけよう
・歌に必要ないろんな筋肉の意識
・歌以外のボイトレはたくさんある
今回は声を出さないボイトレです。
ボイストレーニングは歌の上達なので、最後は発声の筋肉と呼吸の筋肉の連動が大切です。
しかし、スポーツ選手も実践ばかりしているわけではありません。実践に活かすために部分的なトレーニングをする人はたくさんいます。
今回は実際に声を出しながらボイトレをしているとき、良い効果が増えるようなトレーニングを4つほどご紹介します。ぜひ最後までお付き合いください。
声を出さないボイトレの基本は呼吸と身体の連動
今回紹介する声を出さないボイトレは『身体と呼吸の連動』をテーマしています。
②ドローイン
③IAP呼吸
④指突っ込み
歌は全身運動です。
発声に一番大事なのは喉周りの筋肉ですが、筋肉同士はつながっていて、喉からどんどん遠くまで連動しています。だからこそ、筋肉の連動や研究ができなかった遥か昔から『お腹から声を出す』とか『足の裏で地面を感じて』とか『天井から吊り下げられているように』なんて言葉が使われてきたんだと思います。
逆に言えば、喉周りだけでなく全身の連動を感じながら声を出すことができればあなたの歌声は他の人の何倍も素敵なものになるでしょう。それでは、ひとつひとつみていきます。
声を出さないボイトレ① 壁プッシュ
歌っているときに音が不安定な人、胸まわりが必要以上に凹んだりして首が前に出たり姿勢が崩れてしまう人はぜひ挑戦してくだい。
歌い出しの力みが減ると、それだけで歌全体の緊張は減少します。
やり方
距離は肩が前に出ないように気をつけて両手を突き出したくらいです
②掌が肩幅より外側、顔の高さにくるように『降参(お手上げ)』のポーズを取ってください
③足の位置を変えずに壁に倒れ込みます
④その状態で息を吸ったら、ゆっくり息を吐きながら壁を押して腕を伸ばし元の位置に戻ります。胸の広さをキープしながら行ってください
わかりにくい人は『膝立て伏せ(膝つき腕立て伏せ)』でも大丈夫です。
肩幅より広く腕を開き、腕立て伏せと同じ動きで一度身体を沈めます。その状態で息を吸って胸を開き、息を吐きながら地面を押して元のポジションに戻ります。
肘を開いて行うことで胸周りの筋肉の連動を意識します。筋トレほど頑張る必要はありません。
特に小胸筋が柔軟に働くようになると猫背のときの巻き肩改善などに効果があります。他にも息を吸う時のサポートをしてくれたり、肩こり改善にも役立つ場合があります。呼吸に必要な肋骨周りの筋肉がガチガチに硬いと発声にも影響が出てしまうので改善したいですね。
姿勢の安定、呼吸の安定、そしてそこからくるリラックス効果は全て発声の効率化にもつながります。
胸を開いた状態をキープしながら息を吐き、壁を押す。
ぜひ挑戦してみてください。
声を出さないボイトレ② ドローイン
呼吸の安定に必要な横隔膜の動きを支える筋肉、腹横筋を狙って鍛えます。ロングトーン ができなかったり喉に余計な力が入りやすい人は意識的にやってみてください。
やり方
②胸の広さを自然にキープしながらゆっくり息を吐き、下腹から凹ませていきます
③お腹が凹んだ状態をキープしながら浅く呼吸します
上手くできない人は、初めは寝そべって仰向けの姿勢でやってみてください。内臓の重さがかからない分お腹周りの筋肉が動かしやすくなります。
横隔膜、腹横筋や腹斜筋、多裂筋などが鍛えられるため呼吸の安定、身体を動かしたときの体幹の安定といったメリットがあります。姿勢がよくなり、深い呼吸ができるようになることでより使い方を覚えれば歌のクオリティがさらに高まります。
この辺の筋肉は積極的に使わないと上手く連動できないので、積極的に行ってみてください。ウエストが10cmくらい細くなるつもりでお腹を凹ませましょう。
・腰が反ったり猫背にならない
・呼吸は止めない
・食後にやらない
以上の4点が注意点です。使いたい筋肉の動きが弱くなり効果が半減するので気をつけて練習してみてください。
ドローインは『お腹を凹ませたまま呼吸する』という簡単なトレーニングなため、いつでもどこでも挑戦することが可能です。毎日仕事で忙しくてなかなか声を出せる時間が撮れないという人は積極的に取り組んでみてください。
声を出さないボイトレ③ IAP呼吸
IAP呼吸はスタンフォード大学のスポーツ医局が提唱する呼吸法でIntra Abdominal Pressure の略です。ざっくりいうと『体内圧力を高めて姿勢の安定や疲労回復を目指す呼吸方法』です。
やり方
②お腹周りを凹まさずに、数秒かけて息を吐きます
③耳と方のラインが同じで背中が真っ直ぐな状態をキープしてください。
肩甲骨同士を近づけるように縮めたりせず、無駄に胸を突き出したりしないように気をつけてください。ゆっくり吸ってゆっくり吐くこの練習を一日数回1〜3分くらいで良いので挑戦してみましょう。
腹腔内の圧力が高まることで身体の軸が安定した結果、余計な負荷が減ったり疲労回復効果が見込まれます。
歌唱中にこの呼吸を意識するかしないかはボイストレーナーによるのですが、余計な緊張や引き下ろしが入る率が高い気がしてあまり積極的には指導していません。
しかし、呼気中の横隔膜の動きをコントロールする筋肉を積極的に使ったり、姿勢の安定効果があるため呼吸練習としては推奨しています。
身体の歪みが少ないと、中枢神経の指令通りに筋肉が動き余計な負荷が減るため疲れにくくなるとも言われています。
また、余計な歪みが少ないと全身の連動もよくなっていきます。パフォーマンス力の向上はすなわち歌のうまさにつながります。
声を出さないボイトレ④ 指つっこみ
実際に親指を突っ込んで軟口蓋の開きを意識するトレーニングです。若干荒療治ですが正しく意識できると口の中の広さを意識するのに役に立ちます。
やり方
②それ以外の指はチョップ(手刀)の形で揃えておきましょう。
③軟口蓋の開きを意識して一曲分、4〜5分キープします。
口の中が狭く、どこかに指が触れたりすると反射でオエッとなってしまうのでお風呂場での練習をオススメします。加えた指もすぐに洗えるので清潔です。
歌の時によく言われる『軟口蓋を上げましょう』『あくびの喉で歌いましょう』をより意識的に作ります。軟口蓋は上の奥歯のすぐ後ろくらいから耳にかけて、軟口蓋を引き上げる筋肉の働きによって上がっていくので、その動きを意識しながら口を開けましょう。
同時に余裕のある人は表情筋も鍛えます。
頬を持ち上げる筋肉を意識して上唇や口角を引っ張り笑顔を作ります。下顎に余計な力を入れず表情筋の操作で口が広く開けられるようになると高い音を芯のある声で歌うのにとても役立ちます。ハイトーンを力強く歌っているポップス歌手のほとんどがしっかり口が開いているのにはちゃんと理由があるんです。
意識すればボイトレはいつでもできる
今回は声を出さない様々なボイトレについてご紹介しました。
最終的には歌声を磨いていかなければいけないのですが、部分的なトレーニングであれば必ずしも声を出す必要はありません。あなたが意識すればいつでもどこでも何かしらのボイストレーニングはできるのです。
時間は限られています。
自分の目指している状態と今の自分をしっかり観察して、限りある時間を有効に使ってみてください。
あなたの歌が少しでも良いものになりますように。
自分1人でよくわからない人はレッスンお待ちしています。お金をかけたくない人は下記のリンクから無料体験レッスンに参加してみるのがオススメです。